<社説>オスプレイ墜落報告書 欠陥機飛行停止と撤去を


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 昨年6月に米カリフォルニア州で発生した米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落事故について、機体に原因があったと認める調査報告書が公表された。開発段階から指摘されてきた構造的問題を認めたことになる。

 危険な機体がこれ以上、県民の頭上を飛ぶことは許されない。県も日本政府も直ちに行動を起こしてもらいたい。
 報告書は、エンジンとプロップローター(回転翼部分)をつなぐクラッチの作動不良による「壊滅的かつ予期せぬ機械的故障」と説明した。新たな装置に取り換えることで発生の可能性を「99%減らした」という。しかし、これは「事象を軽減する」ものであり「根本的な原因は依然として不明」としており、リスクは変わらない。
 オスプレイにはヘリコプター型ローターが二つあり、離着陸時に上方向に向け、飛行時はプロペラのように前方向に向けるチルトローター機として開発された。構造上、操縦が難しく、またヘリコプターに比べて翼が短いため、離着陸時にエンジンが止まるとローターが回転して軟着陸する「オートローテーション(自動回転)機能」がないなどの弱点がある。クラッチの作動不良で推力が失われれば墜落するしかない。
 このクラッチの不具合は、昨年8月に米空軍が約1カ月間、空軍仕様のオスプレイ、CV22を全面飛行停止したことで明らかになった。在日米軍司令部は「任務環境と機体構成が異なっている」として海兵隊のMV22を飛行停止にしなかった。普天間飛行場に配備した2012年より前の10年に、海兵隊がこの不具合を把握していたことも、この時分かった。米軍の隠蔽(いんぺい)体質、沖縄県民の人権を軽視する姿勢は明らかだ。
 普天間飛行場所属のオスプレイは県民の頭上を日々、飛び回っている。那覇軍港にも離着陸を繰り返している。砂漠に墜落したカリフォルニアでの事故では乗員5人全員が死亡した。もし沖縄で同じことが起きれば、県民を巻き込む大惨事になる恐れがある。
 クラッチの不具合以外の原因による事故も頻発している。16年には名護市安部の海岸に墜落し、同じ日に普天間飛行場に胴体着陸する事故もあった。後部ハッチを開けたままの飛行も確認されており、水の入った水筒などの落下は何度も起きている。
 オスプレイの飛行は日本各地に広がっている。10日からは本土の山岳地帯での低空飛行訓練が可能になり、高度制限が約150メートルから約60メートルに緩和された。陸上自衛隊もV22を運用している。危険性は全国の問題である。
 ただ、人口密集地の上空を日常的に飛行している沖縄では、危険はより切迫している。県民の安全保障のためには、欠陥機の飛行の全面停止、さらに撤去が必要だ。少なくとも、提供区域以外での飛行を禁止すべきだ。