<社説>那覇基地F15倍増 民間空港転換を進めよ


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 沖縄の空に、また一つ不安が加わった。防衛省は航空自衛隊の部隊再編により、那覇基地のF15を現在の20機から倍増し、40機体制にすることを決定した。現在でも民間航空機と自衛隊機が混在する過密空港にさらに負担が増える。

 那覇空港で自衛隊機が関係する事故は、過去に何度も起きている。1985年には自衛隊機が接触して、民間機のエンジン下部がもぎ取られる重大事故があった。昨年6月にも空自ヘリが滑走路を横切り、民間機が離陸を中止した。あわや大惨事という事態だ。これ以外にも自衛隊機トラブルで滑走路が閉鎖された例が何度もある。そのたびに利用者に大きな影響が出ている。
 観光立県、アジアハブ構想など県経済自立への要となる空港機能を阻害するのは、軍民共用という特殊な形態だ。国は「軍」の増強でなく、民間専用空港への転換にこそ力を注ぐべきだ。
 昨年6月の事故の際にも、県内の経済関係者から「安全・安心」への不安や観光へのイメージダウン、事故時の物流への影響が懸念されていた。自衛隊機倍増で那覇空港でのトラブルが増えるリスクは高まりこそすれ、減りはしない。
 安倍晋三首相は昨年、「慰霊の日」のあいさつでこう述べた。
 「アジアと日本をつなぐゲートウェイとしての沖縄。沖縄の発展は、日本の発展をけん引するものであり、私が先頭に立って、沖縄の振興を、さらに前に進めていく」
 その言葉が本当なら那覇空港から、軍用機を一刻も早く撤退させるべきだ。整備が進む第2滑走路は、経済振興に必要とされるものだ。自衛隊の運用能力を向上させるためのものではない。
 一方でF15部隊の増強は年々増加する緊急発進への対応とされる。
 確かに空自の緊急発進は、2014年度に943回あり、冷戦末期の1980年代とほぼ同数になった。中国機に対する緊急発進は464回で10年の96回から約5倍に急増した。
 だが空自が14年度に「特異な飛行」として公表した51件中、領空侵犯は1件もなく、36件がロシア機によるもので、尖閣周辺の飛行は1件にすぎなかった。
 挑発的な行動を繰り返す近隣国にも問題があるのは確かだ。だが自制を求めるのに、対抗する力の増強だけでは際限がない。対話など平和的な交渉によって解決を図るよう政府は努力すべきだ。