<社説>普天間返還25年以降 固定化以外の何物でもない


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 名護市辺野古への新基地建設に固執する限り、米軍普天間飛行場の危険性は除去できない。そのことがあらためてはっきりした。

 米太平洋軍のハリス司令官は、米軍普天間飛行場の辺野古移設完了時期が2025年以降になるとの見通しを示した。国防総省は「普天間の代替施設が完成し、海兵隊が移駐するまで普天間を維持することを約束している」と説明している。
 つまり新基地建設による普天間飛行場の危険性除去には最低でもあと9年は要するということだ。米側は「5年以内運用停止」に応じる意思がないことも、あらためて表明したと言えよう。
 移設作業が予定より遅れるとの司令官発言は、辺野古移設が困難であることの証しである。その認識を安倍政権も共有すべきだ。
 中谷元・防衛相は司令官発言を受けて「順調に進めば埋め立て工事が5年で完了し、22年には普天間は返還可能となる」と述べた。日米で見通しが異なるのは、新基地の完成時期が不透明ということにほかならない。
 いずれにせよ、辺野古移設では長期間にわたって普天間飛行場が居座り、住民は危険にさらされ続けることになる。辺野古移設は普天間飛行場の危険性を放置する固定化以外の何物でもない。
 安倍晋三首相は「最も大切なのは住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化を絶対に避けなければならないことだ。一日も早い返還実現が問題の原点だ」と述べていた。それを実現するには辺野古移設断念しかない。そのことにいい加減気付くべきだ。
 日米両政府が交わした海兵隊の移駐完了まで普天間飛行場の継続使用を認めるとの約束を安倍政権がこの間、県民にしっかり説明していないことは看過できない。説明するどころか埋め立て承認欲しさに仲井真弘多前知事の求めに応じ、5年以内運用停止の実現に取り組むことを約束している。
 安倍政権は宜野湾市長選で5年以内運用停止を公約に掲げ、再選された佐喜真淳市長を支援した。5年以内の期限となる19年2月までの運用停止に政権が責任を持つと市民の多くが期待したことは想像に難くない。
 だが安倍政権は5年以内運用停止について米側にはいまだに要求していない。公約の実現を期待した市民を愚弄するもので、許されることではない。
英文へ→Editorial: MCAS Futenma will remain hazardous in current location until at least 2025