<社説>オスプレイ石垣使用 軍事拠点化は許されない


<社説>オスプレイ石垣使用 軍事拠点化は許されない
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 陸上自衛隊は、10月に在沖米海兵隊などと共同で実施する実動訓練「レゾリュート・ドラゴン23」で、陸自の輸送機V22オスプレイが新石垣空港に飛来する計画があることを正式に発表した。県は飛来自粛を要請していたが、それを押し切った形だ。陸自オスプレイの飛来は初である。

 この訓練を前に普天間飛行場所属のMV22オスプレイが14日、「不具合」を理由に新石垣空港と鹿児島県の奄美空港に緊急着陸した。新石垣では一時、滑走路を閉鎖した。奄美空港には15日にもオスプレイが飛来している。両空港には過去にもオスプレイが緊急着陸しており、長期間駐機し続けたこともある。
 海兵隊仕様のオスプレイはクラッチに不具合が発生する問題が判明している。エンジン停止時にローターが回転して軟着陸する「オートローテーション機能」が欠如している問題も指摘されてきた。
 陸自仕様の機体とはいえ、問題のあるオスプレイの新石垣空港の使用を容認するわけにはいかない。訓練計画に反対する。
 相次ぐ緊急着陸も見逃せない。空港の安定運用と市民の安全に鑑み、新石垣空港を管理する県、地元石垣市は米軍に抗議する必要がある。陸自は今回の事態を重視し、新石垣空港を使う訓練計画を再考すべきである。
 私たちが危惧するのは、「台湾有事」を想定し、このままなし崩し的に民間空港の軍事拠点化が進むことである。既に石垣島や宮古島、与那国島には陸自駐屯地が配置され、市民、町民の負担が増大している。敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有するミサイル配備の動きもある。
 それに加えて自衛隊機や米軍機が空の玄関口であり物流拠点である民間空港を頻繁に使用することになれば空港の運用にも悪影響が出る可能性がある。
 昨年12月に閣議決定した安全保障3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を盛り込んでいる。今年1月の日米外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)はこの方針を日米双方にまで拡大することを確認している。
 今回の「レゾリュート・ドラゴン23」は、その延長上にあるものと言えよう。新石垣空港の飛来について陸自担当者は「有事を含めた任務に直結して非常に意義がある」と語っている。訓練による民間空港の利用拡大は平穏な市民生活や経済活動に逆行する。
 新石垣空港のある石垣市白保は1944年、陸軍白保飛行場が建設されている。沖縄戦の時には激しい攻撃にさらされた。軍事拠点となる施設は攻撃対象となることは歴史が証明している。
 このような出来事を繰り返してはならない。自衛隊や米軍による新石垣空港の利用拡大、軍事拠点化を進めてはならない。