<社説>臨時国会召集訴訟 速やかな召集へ法改正を


<社説>臨時国会召集訴訟 速やかな召集へ法改正を
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 日本国憲法41条で、国会は国権の最高機関と定められている。しかし、その条文は形骸化していないか。

 2017年に安倍内閣が臨時国会の召集要求に約3カ月応じなかったのは憲法違反だとして、野党の国会議員らが国に損害賠償などを求めた3件の訴訟で、最高裁は野党議員側の上告をいずれも棄却した。
 与党であれ、野党であれ、国民の代表である国会議員による召集要求を内閣が放置することは国民を軽視しているも同然だ。要件を満たした要求から召集までの期間について、明確なルールを設ける必要がある。
 17年6月22日、野党は森友・加計学園問題の疑惑追及を目的に、臨時国会の召集を衆参両院に要求した。憲法53条で規定する衆参いずれかの議員の「4分の1以上」の要件を満たしていた。
 しかし、安倍内閣は召集要求を約3カ月放置した。9月28日に臨時国会を召集したが、冒頭で衆院を解散し、臨時国会での審議はなかった。森友・加計学園問題の「追及逃れ」と言わざるを得ない。
 今回の訴訟は那覇など3地裁で起こされた。野党議員側は召集要求に応じなかったことで、疑惑に関する国会質問ができなくなるなど「議員個人の権利が侵害された」などと主張していた。
 最高裁の判決は、内閣は憲法53条に基づく臨時国会の召集義務を負うとした上で「個々の議員の権利などを保障したものではない」と判断した。
 内閣に召集義務があることを示したものの、安倍内閣の対応の違憲性には言及していない。判決に照らせば、安倍内閣の対応についての憲法判断もすべきではなかったか。
 注目されるのは、5人の裁判官の中で、宇賀克也裁判官の反対意見だ。安倍内閣の対応について「召集要求は拒否されたと見ざるを得ない。このような対応は、特段の事情が認められない限り違法だと言わざるを得ない」と断じた。要求から召集までの合理的期間についても、自民党の12年の憲法改正草案や地方自治法の臨時議会招集規定と同様に「20日あれば十分と思われる」と言及した。
 この反対意見を政府・与党は重く受け止めなければならない。
 安倍政権以降、臨時国会が速やかに召集されないケースが常態化している。森友・加計学園問題以降も、菅政権時の新型コロナウイルス対応や岸田政権下の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題などを受け、野党は早期召集を求めたが、政権の動きは鈍かった。
 臨時国会開催の判断が、政権の都合によって左右されるなら、議会制民主主義が揺らぐことになる。国会が国権の最高機関として役割を果たすためにも関係法令を改正し、要求から召集までの期間を規定すべきだ。