<社説>設計変更申請承認勧告 「異様」というほかない


<社説>設計変更申請承認勧告 「異様」というほかない
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 玉城デニー知事が発した「異様」という言葉が全てを言い表している。基地負担の軽減を願う県民と辺野古新基地建設に固執する政府との断絶は根深い。国内政治によって問題解決を図ることがいかに困難であるか、多くの県民は実感したであろう。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設を巡り、斎藤鉄夫国土交通相は、沖縄防衛局による軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう玉城知事に勧告した。設計変更申請を不承認とした県判断に対する国交相の「是正の指示」取り消しを求めた訴訟で、県の敗訴が確定したことを受けた対応である。
 新基地建設に反対する沖縄の民意が政府に顧みられない実情を国際社会に訴えるため、玉城知事がスイス・ジュネーブで開催されている国連人権理事会に出席している時に、国交相は勧告文を県に送りつけた。新基地建設で「地元に丁寧に説明する」という政府の決まり文句とは正反対の行動だ。
 裁判で勝訴したことを振りかざし、期限を切って沖縄に承認決断を強いる。ここには対話と信頼関係の積み重ねで沖縄の基地負担軽減を図ろうという誠実さを見いだすことはできない。
 沖縄に対しては問答無用で応じるという歴代内閣の強硬姿勢は13日に発足した第2次岸田再改造内閣でもそのまま引き継がれた。
 県の意向を確認することなく、国連人権理事会出席時に勧告したことについて玉城知事は「国際社会では異様なことと、昨日も今日も論じられている。国際社会と国内の状況の違いがあるのではと感じられる」と語った。民意を無視する日本政府の態度は民主主義の手続きを重んじる国には奇異に見えるであろう。日本政府は米政府に追従するのではなく、国際社会の目を意識すべきである。
 18日の国連人権理事会に続き、玉城知事は19日、国連NGO市民外交センターが主催するシンポジウムで講演した。この中で2019年の県民投票で投票者の7割が辺野古埋め立て反対の意思を示したのに、日米両政府が新基地建設を強行していることに触れ「民主主義の手続きによる意思の表示がないがしろにされている」と述べた。それは国交相の承認勧告文の送付にも当てはまる。
 承認勧告への対応について、玉城知事は帰国後に検討するという。知事が勧告に応じなければ、国は「指示」に切り替え、それでも対応しない場合には福岡高裁那覇支部に提訴することが想定される。県は極めて厳しい局面に立たされている。
 国連における玉城知事の発言は、沖縄の民意を糾合し、国の強行姿勢と対峙(たいじ)する民主主義と自己決定権に立脚するものであろう。これは国際社会の中でも普遍的な意義を持つ。そのことに沿った判断が玉城知事に求められている。