<社説>承認勧告判断先送り 沖縄の民意、毅然と貫け


<社説>承認勧告判断先送り 沖縄の民意、毅然と貫け
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 玉城デニー知事は米軍普天間飛行場の返還に伴う新基地建設で、名護市辺野古沖の軟弱地盤の設計変更に関する斉藤鉄夫国土交通相の承認勧告に対し、「期限までに承認を行うことは困難」と回答した。期限は27日であったが、判断を先送りした。

 国は近く勧告を指示に切り替え、県の承認を迫ることが予想される。ここでも県が設計変更を承認しなければ、国は福岡高裁那覇支部に代執行訴訟を起こす見込みだ。
 玉城知事はスイス・ジュネーブの国連人権理事会で新基地建設を強行する国の姿勢の不当性を訴えたばかりである。ここで設計変更を承認し、工事の進捗(しんちょく)を許すという選択肢はあり得ない。国の要求に応じず、毅然(きぜん)として沖縄の民意を貫くべきである。
 玉城知事が斉藤国交相に宛てた回答文は「県民、行政法学者等から様々な意見が寄せられており、県政の安定的な運営を図る上でこれらの意見の分析を行う必要がある」などと判断を先送りにした理由を説明している。
 今後、承認指示や代執行訴訟を通じて県に対する圧力は一層強くなっていくであろう。訴訟となった場合も厳しい対応を迫られることが予想される。
 翁長雄志前知事による辺野古新基地の埋め立て承認取り消しを巡る2016年の訴訟で、県側は「この訴訟の判決に従う義務があると考えるか」と裁判長から問われている。同じような問いかけが今後の訴訟で繰り返される可能性がある。日本は「法治国家」であり、裁判結果には従わなければならないという姿勢である。これにどう対抗するか、県側の理論構築も求められる。
 「法治国家」を振りかざし、譲歩や屈服を県に迫る国の圧力はこれまでも続いてきた。しかし、法治国家にはおよそそぐわない行為を繰り返してきたのは国側であることを指摘しないわけにはいかない。
 県の設計変更不承認に対抗し、私人を救済するための制度である行政不服審査法に基づき、沖縄防衛局が「私人」の立場で不服を申し立て、「身内」である国交相に審査請求したのはその例である。この防衛局による「私人なりすまし」は多くの行政法の専門家からも批判された。
 最高裁で敗訴が確定し、承認勧告がなされ、外形的には県が追い込まれているように見える。しかし、法の趣旨まで曲げて県に忍従を強いる国側こそ追い込まれているのだと言えよう。
 県への承認勧告について斉藤国交相は「承認しないで放置することは公益を著しく害することが明らか」と述べた。しかし、多額の予算を費やし、7万本もの杭(くい)を海底に打ち込んで軟弱地盤を改良し、県内外からかき集めた膨大な土砂を投じる新基地建設工事こそ行政合理性に欠け、公益を害するものだ。政府はそのことを自覚し、新基地建設を断念すべきである。