<社説>県庁PFAS流出 危機意識の欠如、猛省を


<社説>県庁PFAS流出 危機意識の欠如、猛省を
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 認識があまりにも甘すぎる。那覇市泉崎の県庁の地下駐車場で、人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)を含む泡消火剤が消火設備の配管から噴射していた。6月18日の確認から公表まで3カ月かかったのは遅すぎる。危機意識が欠如しているとのそしりは免れない。県に猛省を求める。

 しかも、那覇市の公共下水道(雨水)を通って久茂地川に流出していた。国の暫定指針値(1リットル当たりPFOS・PFOA合計50ナノグラム)を下回る量だったとはいえ、消火剤が流れ込んだ久茂地川からはPFASが検出された。

 2010年までに製造された泡消火剤に含まれるPFASは主に国が提供する米軍基地周辺と自衛隊施設から検出されていた。だが、今年に入って7月に那覇市銘苅のなは市民協働プラザ地下駐車場と市金城の市総合福祉センター地下駐車場で泡消火剤が流出した。今回の県庁地下駐車場でも感知器の老朽化による誤作動で約900リットルの泡消火剤が噴射したのだ。

 県管財課によると、消火剤の入るタンク自体は交換済みだったが、配管にPFASが残っていた。噴射した泡消火剤の大部分は側溝から階下の「湧水槽」に流れ込んだ。湧水槽は一定の水位になるとポンプでくみ上げる仕組みだが、9月12日に洗浄などのためにふたを開けたところ、水位が下がっていた。そこで初めて外部への流出を把握したという。

 県総務部は泡消火剤の外部流出が判明した日に公表する方針に転じたというが、そもそも地下駐車場は一般市民が出入りする場所だ。噴射確認の時点で公表すべきだ。玉城デニー知事には国連出発前の15日に説明したという。足元で流出事故が起きたのを把握していたにもかかわらず、玉城知事は国連で米軍基地が汚染源とみられるPFASの問題を訴えたことになる。

 県民の健康を最優先に考えるのなら、報告を受けた時点で「県庁でも流出事故があった」と謝罪し、米軍に求めてきたように自らも原因究明と再発防止を速やかに約束するのが筋である。

 米軍基地が原因とみられるPFASの汚染事案は一筋縄ではいかない。提供施設の排他的使用を認める日米地位協定が壁となり、基地の内部を自由に調査できる権限は日本側にはない。県民の健康を守るべき県は、県庁のPFAS流出と公表遅れを反省し、日米両政府に対しては引き続き地位協定の抜本的な改正を求めていくべきだ。

 発がん性などが指摘されるPFASを巡っては、規制を厳格化する動きが国際的に進んでいる。県は関連施設での管理状況を速やかに一斉調査すべきだ。同時に、民間事業者などに対しても流出事故があった場合の通報や、流出した配管などの設備を迅速に取り換えるなどの応急措置の徹底を改めて呼びかけてほしい。