<社説>設計変更承認指示 歴史に堪える知事判断を


<社説>設計変更承認指示 歴史に堪える知事判断を
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 米軍普天間飛行場の全面返還を確認した1996年の日米合意に端を発し、今日まで続く辺野古新基地建設問題は重大局面を迎えた。玉城デニー知事は新基地拒否の民意を踏まえ、数々の困難と闘ってきた沖縄の歴史にも堪える判断を下さなければならない。

 斉藤鉄夫国土交通相が大浦湾側の軟弱地盤の設計変更を承認するよう県に指示した件で、玉城知事は指示期限であるきょう、判断を示す予定だ。承認すれば国は大浦湾側の地盤改良に向けた作業を加速させる。不承認ならば国は代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起する。県は大きな岐路に立たされている。
 新基地建設問題で沖縄の民意を受け、政府と厳しく対峙(たいじ)した翁長雄志前知事の死去を受け、玉城知事は新基地反対を訴えて当選を重ねた。9月には翁長前知事以来、8年ぶりに国連人権理事会に出席し、建設を強行する政府の理不尽を訴えてきたばかりだ。
 玉城知事の判断に承認はあり得ない。沖縄の決意を表明し、堂々と判断してほしい。
 普天間飛行場返還・移設問題の原点は「普天間の危険性除去」だ。しかし、96年の日米合意は県内移設を条件とするもので、多くの県民は基地のたらい回しと受け止めた。
 橋本龍太郎政権時の海上ヘリポート基地、基地問題の現実的対応を掲げた稲嶺恵一県政の軍民共用空港、辺野古沿岸部に建設する新基地と変遷をたどる中、常に県民の過半数以上は県内移設を拒否してきた。普天間問題の抜本的解決にはならないからだ。
 だからこそ県民は近年の県知事選や県民投票で新基地建設反対の意思を示してきた。極めて民主的な手続きを踏んだのだ。これに対して国側はおよそ「法治主義」とはかけ離れた手法まで用いて埋め立てを強行する。理は沖縄にあることは明々白々である。
 新基地建設で自然環境や住環境の悪化が懸念されている。ジュゴンが回遊した豊かな海は深刻なダメージを受けるだろう。オスプレイをはじめとする米軍機による重大事故への不安を拭い去ることはできない。加えて軟弱地盤が見つかった。計画自体、現実性が乏しいのである。
 危険性除去の方策は、普天間飛行場の運用停止以外にない。政府が7万本ものくいを大浦湾に打ち込んでも工事の長期化は避けられない。この間も普天間飛行場の運用が続けば地域住民の危機は放置される。現行計画に固執する限り危険性除去は困難だ。
 斉藤国交相は「承認しないで放置することは公益を著しく害することが明らか」と述べている。誰にとっての「公益」なのかを問いたい。
 既に沖縄は「公益」を名目に、日米安全保障条約による米軍基地の過重負担を背負っている。さらなる負担の押しつけは県益に反する。国益にかなうかも疑わしい。沖縄はこれ以上、「公益」の犠牲になることを拒否する。