<社説>旧統一教会解散請求へ 被害者救済の対策急げ


<社説>旧統一教会解散請求へ 被害者救済の対策急げ
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 高額献金被害の訴えが相次いだ世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、政府は解散命令を請求する方針を固めた。12日にも宗教法人審議会を開いて意見を聞き、その後に東京地裁へ申し立てる方向で調整しているという。

 解散命令が出されれば、旧統一教会は宗教法人格を失い、税制上の優遇が受けられなくなる。
 旧統一教会は、つぼや印鑑などを高額で売りつける「霊感商法」などが社会問題となり、多くの被害者を出した。
 昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を契機に、旧統一教会の高額献金被害などが改めて問題化した。文化庁は解散命令につながる法令違反が疑われるとして、昨年11月以降、宗教法人法に基づく質問権を計7回行使したほか、並行して高額献金の多数の被害者の聞き取りを実施してきた。
 宗教法人法では「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合、所轄庁などの請求により裁判所が解散を命じることができると規定する。
 これまでに法令違反を理由とした解散命令は、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と霊視商法詐欺事件を起こした明覚寺の2件で、いずれも刑事責任を問われたケースだ。
 旧統一教会は、法的責任を認めた民事判決が22件あるものの、教団幹部が刑事責任を問われた事件がなく、解散命令請求に向けた調査は長期化した。このため政府は、民法の不法行為も法令違反に含まれると解釈を変更し、被害者証言などから不法行為の「組織性、悪質性、継続性」が確認できたと判断、請求に踏み切る構えだ。今後は、請求について裁判所の判断が焦点になる。
 しかし、解散命令が出されたとしても、それで終わりではない。裁判所が解散を命じるまでの間に、韓国の教団本部に資金が移送される恐れがある。そうなれば被害者への賠償も困難になる。
 また、宗教法人としての旧統一教会が解散しても、信者らが宗教団体として活動することは可能だ。反社会的と指摘された団体が名称を変えて存続する可能性も否定できない。被害者救済法も成立したが、宗教を背景とした児童虐待など「宗教2世」への支援も含め課題は多い。
 解散命令請求は問題解決への第一歩に過ぎない。「信教の自由」を守りながらも、不法行為や人権侵害などが続いた場合の対応を法整備も含め本格的に検討すべきだ。
 今回の問題では、旧統一教会側と政治家との関係も浮き彫りになった。第2次岸田再改造内閣では、盛山正仁文部科学相ら4人に接点があった。解散命令請求をしたからといって、閣僚らの説明責任がなくなったわけではない。影響力拡大に利用されていなかったかなど、徹底的な検証が引き続き求められる。