際限のない殺りくが続いている。国際社会は停戦への働き掛けを急ぐべきだ。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃によって始まったイスラエルとの戦闘は極めて深刻な事態に陥った。双方の死者は11日までに計2千人を超えた。
イスラエル軍はガザとの境界付近の一部に装甲車や砲撃用車両を集結させ、圧力を強化している。それに対しハマスは、拘束する人質の殺害を警告し、イスラエル軍の侵攻をけん制している。
市民の犠牲をこれ以上増やしてはならない。憎悪の連鎖を断ち切るため、国際社会は協調し、双方に停戦を求めるべきだ。
残念ながら国際社会は分断したままだ。ハマスによるイスラエル攻撃を受け、バイデン米大統領は7日、「米国はイスラエルと共にある」としてイスラエル支持を明確にした。9日には米国、英国、ドイツ、フランス、イタリアの各国首脳が電話会談し、イスラエルへの「揺るぎない結束した支持」を表明する共同声明を発表した。
イランの最高指導者ハメネイ師は10日、ハマスのイスラエル攻撃への関与を否定した上で「勇敢なパレスチナの若者」の戦いを称賛した。
激戦のきっかけとなったハマスの奇襲攻撃は非難されるべきだ。一方、昨年12月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権によるパレスチナへの強硬姿勢が戦闘の背景にあると指摘されている。
双方は攻撃を継続する構えを見せている。このままイスラエル軍がガザへの地上侵攻に踏み切れば、戦火は拡大する。それはなんとしても避けなければならない。
ハマスは事前通告なしにイスラエルが空爆した場合、人質を処刑すると表明している。極めて卑劣な行為であり、民間人の人質を直ちに解放しなければならない。イスラエル軍もさらなる惨禍を招く地上侵攻には慎重であるべきだ。その上で双方が停戦、和平に向けた交渉を模索しなければならない。
国際社会はその環境整備に向けた努力を急いでほしい。イスラエルとパレスチナ解放機構が相互承認した1993年の「オスロ合意」の精神を生かす時である。
日本の役割も考えたい。
岸田文雄首相は自身のX(旧ツイッター)に、ハマスのイスラエル攻撃を「罪のない一般市民に多大な被害が出ており、強く非難する」と表明し、イスラエル軍のガザ空爆に関しても「多数の死傷者が出ていることを深刻に憂慮する」と強調する文章を投稿している。この姿勢を外交で実践すべきではないか。
過去の戦争で日本はアジア・太平洋の国々に犠牲を強い、自国民の人命も失った。その反省を踏まえた平和主義の理念に基づき、国際社会の中で人道的な側面で役割を果たす必要がある。