<社説>レゾリュート・ドラゴン 「前線」想定訓練認めない


<社説>レゾリュート・ドラゴン 「前線」想定訓練認めない
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 離島防衛を想定した九州・沖縄の自衛隊や在日米軍の施設を中心にした陸上自衛隊と米海兵隊の大規模実動訓練「レゾリュート・ドラゴン23」が行われている。沖縄を戦場の「前線」にする準備が、あまりに急速にエスカレートしている。「軍隊は住民を守らない」ということを沖縄戦の教訓とする県民にとって、戦場となることを想定した訓練を認めることは絶対にできない。

 熊本県の駐屯地で行われた開始式で米側の指揮官である第3海兵兵站群司令官のアダム・チョークリー准将は「この訓練は、脅威に対してわれわれが抑止対処する能力があると披露する場でもある」と述べた。西部方面総監の山根寿一陸将は「日米の相互運用性を向上させ、今事態が発生しても共同で対処できる体制を確立しなければならない」と訓示した。
 「抑止」とは「相手に行為を思いとどまらせること」とされる。「対処」とは「抑止が破綻した後の事態に対応すること」を意味する。抑止が破れれば、戦闘が起きる。その対処力がなければ抑止力とはいえないという論理だ。木原稔防衛相も先月、オースティン米国防長官との会見に向けて「日米の戦略を踏まえた同盟の抑止力、対処力の強化に向けた具体的取り組みについて、率直な議論を行いたい」と述べていた。
 平和外交の努力が見えないままに抑止力、対処力に前のめりになっている。
 今回の大規模訓練で、新石垣空港に陸自のV22オスプレイが飛来する予定である。県内への初飛来となる。奄美大島を経由して熊本県の高遊原分屯地に負傷者を搬送する訓練という。石垣島を「前線」と想定しているのである。
 訓練はほかに、上陸した敵との戦闘、基地警備、滑走路復旧など多岐にわたる。陸自西部方面隊の主力約5千人、米側1400人が参加する。
 石垣市は訓練開始前日に、訓練を「必要なものであると理解している」とした上で、沖縄防衛局に住宅地上空の飛行を避けること、通勤通学の時間帯に大型車両の通行を避けることを要請した。これは、約1カ月前から市ホームページに掲載している陸自の説明資料にある「訓練実施に当たっての安全配慮」をなぞったものだ。
 石垣市では、訓練開始を受け約180人が抗議集会を行った。市議会で「市民に十分な説明がない」などと抗議する意見書が可決されたが、賛成11、反対10の1票差で、市議会は分断状態だ。自衛隊のなかった島が一気に軍事化し、「前線」に見立てて米軍との共同訓練が行われるようになってしまった。
 住民が戦闘に巻き込まれた沖縄戦の教訓を今こそ思い起こすべきだ。シェルター設置よりも、住民避難計画よりも、信頼を構築する平和外交が必要だ。戦争を起こさせないことが最も重要だ。