<社説>過去最低の内閣支持率 国民の生活苦に向き合え


<社説>過去最低の内閣支持率 国民の生活苦に向き合え
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 岸田内閣の支持率が報道各社の世論調査で最低水準となった。物価高への有効な対策が示されていないことに加え、防衛力増強などの財源確保策が不透明なままだ。国家財政の将来への不安が広がっている。与党自民党が決別を宣言した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係についても断ち切れていないとの不信感が根強い。

 20日には臨時国会が召集される。岸田文雄首相は、財源の裏付けとなる2023年度補正予算案を提出する方針だ。論戦では各党から厳しい追及が想定される。首相には国民の疑問や疑念に真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められる。
 共同通信が今月14、15両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は前回9月調査から7.5ポイント下落の32.3%だった。21年10月の内閣発足後、最低となった。不支持率は前回から12.8ポイント上昇の52.5%と過半数を占め、過去最高だ。
 国民は生活実感として暮らし向きの上昇を感じられない。最低賃金の引き上げなど、政権は賃上げを主要施策としている。ただ、エネルギー資源価格の高騰や円安などもあり、物価高の波は賃金の上げ幅を上回るものがある。
 厚生労働省が6日に発表した8月の毎月勤労統計調査で実質賃金は17カ月連続のマイナスとなった。国民の目には物価高への対応で手をこまねいているように映る。
 マイナンバーカードを巡ってトラブルが続発しながら、マイナカードとの一本化による健康保険証の廃止を来年秋に断行する方針だ。健康保険証の廃止には国民の不安が根強いにもかかわらず、その声を顧みようとはしない。
 国民の不信に向き合わない、疑念に応えようとしないのは旧統一教会との関係についても言える。多くの自民党議員が選挙で支援を受けていたことなどが発覚した。党の接点調査などを経て、つながりのあった議員の多くは教団との関係を断っていよう。
 しかし、世論調査では、自民党が教団との関係を「断てていない」「あまり断てていない」が合計で6割に達した。細田博之衆院議長が説明責任を果たしていないとの批判を受けている。解散命令請求について8割超が「評価する」としているが、支持率には表れない。国民の多くが「これで幕引きとはならない」と考えているからではないか。
 補正予算案に加え、物価高などに対応する経済対策が10月中に策定される。一方で、防衛費や少子化対策の財源確保は不透明なままだ。防衛増税の開始時期についても示されないまま臨時国会を迎える。
 岸田首相は「聞く力」をアピールしてきたが、生活苦にあえぐ国民に向き合う姿勢が伝わらない。政権浮揚を意識した場当たりの対応が目立つからだ。国会論議ではさまざまな疑問をかわすことなく、自ら強調してきた説明する姿勢を示してもらいたい。