<社説>久高氏不正受給疑惑 幕引きせず全容説明せよ


<社説>久高氏不正受給疑惑 幕引きせず全容説明せよ
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 政務活動費の不正受給疑いで県警の家宅捜索を受けていた久高友弘前那覇市議会議長の議員辞職願が受理された。久高氏は議場を去るが、これで幕引きとはならない。市議会運営を混乱させた責任は重大である。市民の前に全容を明らかにすべきだ。

 久高氏の辞職願の扱いを話し合う市議会各派代表者会議は本人の出席を求めたが、警察の事情聴取が続いていることなどを理由に出席を固辞している。議会議長という重い役職にあった者の態度として不適切だ。説明責任をあいまいにしてはならない。
 久高氏は政務活動費192万円を不正受給した疑いが持たれている。それ以外に、那覇市有地の所有権を巡って市議会で取り上げる見返りとして、2021年2月に議長室で不動産コンサルタント代表の男性から5千万円を渡されたとの疑惑が今年3月に明るみに出た。
 現金の受け渡しは2021年2月で5千万円だったとされる。旧泊浄水場関連用地の所有権回復を求める90代義母の後見人の女性と所有権の回復を全権委任された久高氏、不動産コンサルタント代表の男性らとの間で土地売買取りまとめに関する費用などとして、議長室で授受があったとされる。
 不動産コンサルタントの男性は「土地の調査費や議会対策などに金が必要だと言われ、現金を渡した」と主張した。久高氏は当初、領収証にサインをしたことを認めつつ、「お金は後見人が持っている」として自らが収めたことは否定していた。
 ところが今月に入り、県警が関係先の一斉家宅捜索など捜査を本格化させたことで事態が一変した。捜査関係者などによると、県警の聴取に対し、周囲の関係者が久高氏の授受を認める証言をし、最終的に久高氏は現金の受領を認めざるを得なくなった。
 久高氏は12日までに本紙の取材に対し、5千万円のうち後見人の女性が1千万円、久高氏が4千万円を持ち帰ったことを明らかにした。4千万円のうち、500万円は不動産コンサルの男性と立会人の男性計2人に手数料として支払い、残る3500万円は久高氏が所持している。久高氏が関わる訴訟費用など私的な流用もあったという。
 議長室で金銭の授受があった。事実なら贈収賄も疑われる重大な問題だ。表沙汰になってから7カ月の間、説明を二転三転させた久高氏は、議会や有権者を軽視していたと言わざるを得ない。久高氏から市有地の所有権について議会で取り上げるよう求められたという市議も、具体的なやりとりをこの際説明すべきだ。
 政治とカネの問題は後を絶たない。議員を辞しても久高氏は全容について説明責任を果たさなければならない。それが再発防止の第一歩となり、疑惑の詳細を明らかにすることが権力の腐敗を防ぐ一つの手だてとなる。