<社説>陸自オスプレイ初飛来 負担の限度を超えている


<社説>陸自オスプレイ初飛来 負担の限度を超えている
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 陸上自衛隊の垂直離着陸輸送機V22オスプレイが新石垣空港に着陸し、訓練を実施した。沖縄への陸自オスプレイ飛来は初めてで、県の2度にわたる新石垣空港の使用自粛要請を無視し着陸を強行した。

 陸上自衛隊と在沖海兵隊などによる日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」の一環だ。県内では、オスプレイの飛来だけでなく、自衛隊と米軍の車両がうるま市の公道を使って、火薬類の搭載を示す「火」の表示を掲げたコンテナを輸送するなど民間地での軍事訓練が拡大している。
 オスプレイは構造的欠陥が指摘されており、2012年に米海兵隊の機体が県内に配備される際、約10万1千人(主催者発表)が超党派県民大会で配備反対の声を上げた。しかし、配備当時と今日では決定的違いがある。墜落や部品落下などの危険にとどまらず、今回は有事を想定した訓練の一環なのだ。沖縄が戦場になることが前提で、非常に危険な動きだ。もはや沖縄への軍事負担の限度を大きく超えている。日米政府は訓練を直ちにやめ、沖縄を戦場にしない努力を尽くすべきだ。
 米有力誌タイムは墜落事故を繰り返したオスプレイを「空飛ぶ恥」と呼んだ。開発段階から「未亡人製造機」ともやゆされた。事故時に機体を軟着陸させるオートローテーション機能の不備や、給油口がプロペラに近接していること、短期間で交換が必要となるエンジンの欠陥など構造的欠陥はいくつも指摘されている。
 12年に配備された米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイは16年に名護市安部で墜落、17年にも豪州で墜落し、18年には機体の一部を落下させている。緊急着陸などのトラブルは後を絶たず、陸自オスプレイが石垣島に飛来した19日も普天間飛行場所属のオスプレイが徳之島空港に緊急着陸している。
 オスプレイへの県民の不安は根強い。しかも今回の陸自オスプレイの飛来は沖縄の人々にとって墜落や部品落下などという、平時の危険性とは別次元の危険がある。沖縄を戦場と見立て、戦争に備えるための訓練だからだ。
 今回の飛来は、有事になれば長崎県に駐屯する離島奪還部隊の陸自水陸機動団を乗せて南西地域に展開することが想定されている。加えて米海兵隊のオスプレイも先島で訓練する構想がある。防衛省関係者は「海兵隊のオスプレイ飛来への地ならし」と述べた。
 11月15日にはキャンプ・ハンセンに駐留している第12海兵連隊が改編され、島しょで分散展開する「海兵沿岸連隊(MLR)」となる。有事にはオスプレイの展開も想定される部隊で、先島で駐屯する陸自との連携が見込まれる。
 日米合同訓練の激化は中国などを刺激し沖縄住民を守るどころか、むしろ緊張を高める。日米政府は軍事演習ではなく対話や外交による紛争の火種の除去に注力すべきだ。