<社説>県行政のミス相次ぐ まずは原因を検証せよ


<社説>県行政のミス相次ぐ まずは原因を検証せよ
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 県庁で不適切な財務処理が相次いでいる。手続き漏れなど通常であれば考えられない事態が繰り返されている。どこに原因があるのか、しっかりと検証する必要がある。

 土木建築部所管の二つの整備事業特別会計を巡って、2022年度決算で計119万円の赤字が出たが、出納整理期間内に23年度歳入から繰り上げ充用を行わなかったため、地方自治法違反の状態に陥った。特別会計で出納整理期間後に赤字が判明するのは、県として初めてのことである。
 同じく土建部所管の二つの事業で手続きミスがあり、約2億3千万円の国庫補助金を
受けられないことが判明した。
 さらに続く。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県が22年度に設置した宿泊療養施設の運営委託業務で不適切な会計処理があり、国からの補助金が得られない可能性がある。
 土建部所管の2事業に関する補助金の手続きミスは、一括交付金事業との違いに気付かなかったという。内部けん制が機能しなかった。県の特殊性に配慮して活用される一括交付金に慣れすぎたことで補助が受けられないとすれば、何をかいわんやである。
 これら財務処理のミスも含め、県議会野党を中心に玉城デニー知事への問責決議案が提出された。決議案は辺野古埋め立てを巡る最高裁判決に県政が応じないことも提案理由とした。代執行の応訴は圧倒的な民意に添った県政の対応であり、これに対する問責は是認はできない。ただ、相次ぐ財務上の失態についての野党の指摘は一理ある。
 職員個々の問題に帰すべきではないという点、根拠法や制度に精通してしかるべき行政の基本動作が継承されていない、十分に育成できていないのではないかという点だ。
 だからこそ、野党は知事の責を問わなければならないのだと論理付けた。筋は通ってはいる。本会議で賛成少数で否決されたとはいえ、初の問責決議案の提出は県政にとって重たいものがある。
 特会の問題については、是正のための補正予算案を与党の動議で議決せず、県に返付している。結局は知事による専決処分が承認されたが、一連のミスを含め、与党からも厳しい指摘が上がった。議会からの批判を県執行部は真摯(しんし)に受け止める必要がある。
 新型コロナ対策に関する業務逼迫(ひっぱく)による職員の業務負担が甚大だったことが背景にあるとの指摘もある。県は会計の専門職を養成することなど対策に乗り出す方針だ。再発防止策は当然に必要だが、まずはなぜ発生したかを検証し、県民につまびらかにすることが求められよう。
 関係する事業は補助金を受けなくとも財源をやりくりして実施はされるという。執行されれば問題はないという意識が庁内に少しでもあるのであれば、そこから戒められるべきである。