<社説>産業まつり開幕 沖縄の価値高める機会だ


<社説>産業まつり開幕 沖縄の価値高める機会だ
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 きょうから第47回沖縄の産業まつりが開幕する。29日までの3日間、那覇市の奥武山公園と県立武道館に県産品が並ぶ。今回のテーマは「県産品 みんなで創る 島の価値」。県内の全産業の自慢の製品・生産物に触れ、優良品を県内外に伝えたい。

 新型コロナウイルスの感染拡大で2020、21年はオンライン開催だった。22年は奥武山公園などでの開催にこぎ着けたが、感染防止対策のため入場前の検温や人数制限などがあった。通常開催は実に4年ぶりとなる。
 行動制限のない産業まつりを心待ちにしていた人も多いだろう。今年の出展社数は393社で、昨年の319社から74社増えた。企業・団体が新製品を披露する場でもある産業まつりに、多くの人出が予想される。
 産業まつりの歴史は40年以上前にさかのぼる。沖縄は1975年に本部町で開催された沖縄国際海洋博覧会の後、深刻な不況に陥った。県経済の活性化を図ろうと、平良幸市知事(当時)が提唱し、77年に第1回が開催された。
 当時、安定的に県民に消費されていた県産品は砂糖や食パン、カマボコなどに限られていた。本紙の社説は「焼き肉、ハムのような肉加工品には、本土メーカー品と肩を並べる品質のものがすでに生まれている」とし、県産品の県外への出荷を促している。
 首都圏の市場から離れていることや、県内の市場規模が小さいことなど、沖縄の製造業を取り巻く環境は厳しい。だが、県内企業の絶え間のない努力と、コロナ禍をくぐり抜けた粘り強さで、県産品の品質は確実に向上し、市場は県内外に広がっている。
 まつりの規模は第1回とは比較にならないほど拡大し、今や農産物から電気自動車(EV)まで全産業を網羅した沖縄最大の総合産業展として内外から注目されている。
 「沖縄の特徴を積極的に取り入れることでオンリーワンの商品を目指せるのではないか」とまつり実行委員会の古波津昇会長(県工業連合会会長)が指摘するように、沖縄に愛着を持てるような県産品が、沖縄の付加価値を一層高めることにつながるだろう。
 最近の県産品は、環境に配慮した商品や開発にストーリー性が込められた商品などが注目を集めている。廃棄処分されていたおからや、割れた塩せんべいを活用した菓子などが高い評価を受けている。食料廃棄を減らすというSDGsの精神にもかなう取り組みで、後に続く県産品開発の手本となりそうだ。
 商工会特産品フェア「ありんくりん市」や産学官イノベーション創出展など、産業まつりは見どころは多い。
 県産品愛用で県内企業を応援し、優良品の開発を支えよう。企業の成長が雇用拡大や経済の活性につながる。産業まつりの意義を改めて県民全体で共有し、沖縄の価値を高める機会としたい。