<社説>首里城焼失4年 再建へ着実な技術継承を


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<社説>首里城焼失4年 再建へ着実な技術継承を
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 首里城火災からあすで4年になる。昨年11月には正殿の再建に向けた起工式があり、2026年秋の完成に向け、着実に歩みを進めている。沖縄のシンボルとも言える首里城がよみがえるまで、県民挙げて再建に取り組みたい。

 再建に当たって国と県は「見せる復興」を掲げている。北殿側の城壁沿いに整備した全長140メートルの仮設デッキが一般開放されたほか、23年8月に公開された工事現場等を覆う「素屋根」には見学できる区画があり、復元の過程が間近で見ることができる。「素屋根」の見学区画では、火災遺物や再建に使われる木材に触れることも可能だ。
 首里城再建に向けては、県内外から多くの寄付が寄せられた。県によると、23年3月末までに、首里城復興基金と首里城未来基金で計57億3718万33円に上り、現在も寄付が寄せられている。
 再建への過程を見せることは、国や県だけでなく多くの人々が共に再建に向けて取り組んでいることを実感できる試みだ。国や県には今後も再建過程を公開するよう努めてほしい。
 長期的な課題として、維持・修復などにおいての技術継承・技術者育成も浮かび上がっている。壺屋陶器事業協同組合は、「平成の復元」で県外の技術者が制作した正殿の龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)の復元について、沖縄側が主体的に関わるよう訴えてきた。県内での技術継承・人材育成がその目的だ。那覇市議会での意見書可決などもあり、首里城復興基金事業監修会議で、壺屋陶器組合と県外の技術者が連携して龍頭棟飾を復元・制作することが決まった。
 首里城をはじめとした琉球王国の文化を継承していくためには、補修・復元に向けた県内での技術者育成が欠かせない。県は職人育成の事業も本格化させており、より力を入れていくべきだ。
 一方、火災では美術工芸品1510点のうち、1119点が焼失を免れたものの、うち364点は修復が必要とされた。前例のない規模であり、かつ文化財としての価値を損ねないよう慎重な修復が必要なため、全ての作業を終えるには20年以上かかる見通しだ。漆器や絵画など多岐にわたるが、修復状況の情報公開や管理体制の整備のほか、修復作業を通した技術者育成に取り組んでほしい。
 首里城の焼失は5度目となる。1945年、激しい地上戦となった沖縄戦では、地下に日本軍の第32軍司令部壕が築かれ、攻撃目標となり、首里城は破壊された。県は現在、第32軍司令部壕の保存・公開に向けた基本方針を定めている。首里城が再建される26年には戦争遺跡としての文化財指定に取り組む構えだ。
 沖縄戦の実相を正しく継承していくためにも、首里城再建と第32軍司令部壕の公開は切り離せない。県は司令部壕の確実な公開実現にも全力を挙げてほしい。