<社説>軟弱地盤 申請前認識 沖縄欺く行為許されぬ


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<社説>軟弱地盤 申請前認識 沖縄欺く行為許されぬ
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 新基地建設を強行するために事実を意図的に隠蔽(いんぺい)していたのなら不誠実極まりない対応と言わざるを得ない。

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局が埋め立て申請前の2007年の段階で大浦湾の軟弱地盤について追加のボーリング調査が必要だと結論付けていた。ところが調査を実施しないまま13年、当時の仲井真県政から埋め立て承認を得ていたのだ。
 沖縄を欺くような行為であり容認できない。大浦湾の軟弱地盤を巡って国は現在、設計変更申請を不承認とした玉城県政を相手取り、代執行訴訟を起こしているが、正確な情報を開示しないまま進めてきた手続きに正当性はない。国は直ちに訴えを取り下げ、県との協議に臨むべきだ。
 福岡高裁も、だまし討ちとも取れる対応で新基地建設を強行してきた国の姿勢を正面から裁くべきだ。
 共同通信が入手した防衛局と委託業者が07年にまとめた地層調査の報告書では、新たに実施した音波探査と過去の調査を合わせて分析し、辺野古周辺の海底に「軟弱な沖積層が広く、厚く分布する」と結論付けていた。
 その上で、大浦湾側の地質構造については「設計・施工には(沖積層の)分布状況の精度向上と性状把握が必要」と指摘。追加のボーリング調査の実施と採取した土の強度の評価などを通じて「設計・施工に必要な基礎資料を提供する必要がある」としていた。07年の報告書は大浦湾側の地質に関する追加調査を求めていたのである。
 それにもかかわらず、国は埋め立て申請まで調査をしなかったのだ。不作為や怠慢では済まされない。
 普天間飛行場移設問題を巡っては、1996年に名護市への移設案が浮上して以降、歴代の知事や名護市長は基地建設受け入れの是非に直面してきた。政府は新基地建設を国策として進めるため「アメとムチ」の姿勢で沖縄に応じてきた。新基地阻止の訴えを強権で封じる一方で、振興策によって地元の容認を引き出そうと画策してきた。
 軟弱土壌に関する対応も同様である。事実を明らかにせず、必要な調査を実施しないまま埋め立てを申請し、軟弱地盤改良のための設計変更申請の承認を迫っているのである。強権で沖縄に対処する姿勢が新基地問題を長引かせているのだ。
 結局、2014年当時に3500億円としていた総事業費は1兆円規模に膨れ上がっている。07年当時に調査が必要と報告されていた大浦湾で最深90メートルまで続くとされる軟弱地盤の改良工事は含まれておらず、さらに膨大な血税が投入される可能性もある。
 事実を隠したまま地盤改良は必要ないと説明していた埋め立て申請は無効だ。国は沖縄に過重な負担を押しつけるための方便に腐心するのではなく、白紙に戻した上で県との対話に臨むべきだ。