<社説>頻発する高校生犯罪 事件を模倣 深刻な事態だ


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<社説>頻発する高校生犯罪 事件を模倣 深刻な事態だ
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 那覇市の松山公園で今年9月、日本語学校に通う外国人女性が3人組の男に現金約20万円などが入ったショルダーバッグを奪われたひったくり事件で、那覇署は同じ高校に通う17歳の男子高校生3人を窃盗容疑で逮捕した。

 現役の高校生が犯罪行為で逮捕されること自体、あってはならない。驚かされるのは犯行の動機である。
 那覇署によると、高校生らは別の少年らが逮捕された連続強盗事件に関する報道を見て、「俺たちもやるか」「俺たちなら捕まらない」というやりとりをSNS上で交わしていたという。那覇署は連続強盗事件を模倣した可能性があるとみている。
 憂慮すべき深刻な事態だ。犯罪を犯すハードルがかなり下がってしまったと考えざるを得ない。なぜ、自制心が働かなかったのか、その背景を考えなければならない。
 那覇市内では今年に入り、強盗やひったくり事件が相次ぎ、高校生を含む10代少年が逮捕されている。
 ゆいレールおもろまち駅の通路で5月、男性に暴行を加えて金品を奪ったとして当時17歳と18歳の少年2人が強盗傷害容疑で逮捕された。6月から8月にかけて、市内の路上で連続して発生した暴行ひったくりの事件では高校生を含む当時17~18歳の計7人が強盗傷害容疑で逮捕された。
 いずれも集団で襲いかかり、暴行を加えて金品を奪い取るという粗暴で悪質な事件である。それが繰り返されたのだ。
 半嶺満県教育長は「善悪の判断や自己統制力など『豊かな心』の育成に努めてきたが、誠に残念でならない。引き続き生徒たちの規範意識の醸成に向け、家庭・地域・関係機関との連携を強化する」とコメントした。それを言葉だけにせず、実行に移さなければならない。
 今回、3人の高校生が逮捕された事件と、先の事件との関連については捜査機関による解明が進むであろう。それとは別に教育現場と関連機関の連携で犯罪抑止策を検討しなければならない。
 教育長コメントにある「善悪の判断や自己統制力」が欠落していたのは明らかであろう。「俺たちもやるか」というSNS上のやりとりを見る限り、安易な考えで犯罪を起こしたことがうかがえる。事件に遭った被害者の恐怖や痛みを感じ取ることができないのである。
 今回逮捕された高校生3人の学業態度、教職員や在校生との関係、家庭環境や地域との関わりなど、さまざまな側面から犯罪の遠因や背景を解き明かさなければならない。その上で「規範意識の醸成」を図る取り組みを重ねることで、犯罪抑止の第一歩を踏み出すことになる。
 私たちは高校生の実像を直視してきただろうか。見て見ぬふりをしてこなかったか。今回の事件は沖縄の大人社会も厳しく問われている。