<社説>柿沢副法相辞任 疑惑事実なら議員辞職を


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<社説>柿沢副法相辞任 疑惑事実なら議員辞職を
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 政治家が国民を裏切る行為がまた判明した。自民党衆院議員の柿沢未途(みと)氏=衆院東京15区=が法務副大臣を辞任した。東京都江東区の木村弥生区長の公職選挙法違反事件に関与した疑惑を東京地検特捜部が捜査している。

 岸田文雄首相は国会で「任命権者としての責任を重く受け止めている」と述べたが、選挙違反を取り締まるはずの法務省ナンバー2が起こした事態である。どれだけ「重く受け止めている」か、今後の対応で本気度が問われる。
 9月の内閣改造後、不適切な女性関係が報じられた山田太郎前文部科学政務官に続く辞任である。改造前の内閣も閣僚4人が辞任した。岸田政権は不正や疑惑の温床と化していないか。柿沢氏は4月の江東区長選前に区議らに現金を配り、公選法違反(買収)の疑惑もある。説明責任を果たし、疑惑を払拭できないなら議員辞職すべきだ。
 関係者によると、木村氏が4月の区長選中、有料インターネット広告をユーチューブに掲載したとされる事件で、柿沢氏は他のネット広告の事例を踏まえ「効果がある」として、木村氏側に取り入れるよう提案したとみられる。有料ネット広告に使われた動画は東京・永田町の議員会館の会議室で撮影され、柿沢氏の秘書が手配したともみられている。
 柿沢氏は違法性の認識を否定しているが、このような人物を法務副大臣に就けてはならない。違法性を認識していなかったことも大問題だ。
 区議に現金を配ったことも、木村氏が当選した区長選の同時期に実施された区議選に伴う区議自身への陣中見舞いで、木村氏への支援を求める意図はなく「適正」との認識だという。それが事実ならば国会で全容を正直に説明すべきだ。
 だが岸田政権は説明責任を果たさせるつもりはないようだ。国会参院予算委員会の昼の休憩時間に持ち回り閣議で柿沢氏の辞表を受理した。柿沢氏本人をただそうとしていた野党議員の追及をかわそうとした。これでは国民に背を向けるのも同然だ。
 岸田政権では昨年10月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を巡り、曖昧な説明に終始した山際大志郎元経済再生担当相が辞めたのを皮切りに年末までに4人の閣僚が辞任した。今年9月の内閣改造後も、女性問題で文科政務官を辞めた山田氏についても岸田首相は「適材適所」と言い切った。
 国会の論戦では、加藤鮎子こども政策担当相が実母への事務所賃料支払いを認め、やり玉に挙げられたほか、武見敬三厚生労働相が閣僚就任後に開いた政治資金パーティーも問題視されている。
 柿沢氏に対する進行中の問題を含め、オンパレードの疑惑を払拭できなければ、岸田政権に政権を担う資格はない。政治不信を招いた責任を明確にすべきだ。