<社説>ガザ情勢悪化 これ以上犠牲者増やすな


社会
<社説>ガザ情勢悪化 これ以上犠牲者増やすな
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 一刻も早く停戦すべきだ。

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘開始から7日で1カ月となる。双方の死者は合わせて1万人を超えた。国際社会が停戦を求めているが、収束の兆しは見えず、民間人の犠牲は増え続けている。イスラエル、ハマスの双方に自制を求めたい。
 発端は10月7日にハマスがイスラエルに向けロケット弾を発射したことだ。その報復としてイスラエル軍はガザの空爆を開始し、ガザを「完全封鎖」したほか、越境作戦に着手するなど攻撃を激化させている。
 この間、イスラエル軍はガザ北部のジャバリヤ難民キャンプを3日連続で攻撃した。11月3日にはガザ市の病院近くで救急車の車列を空爆したほか、4日には難民キャンプの学校も攻撃した。合わせて30人が死亡、負傷者も110人に上るとされる。イスラエル軍は、救急車はハマスが使用していたと主張するが、病院や学校は住民の避難場所にもなっており、非人道的と言わざるを得ない。
 国連のグテレス事務総長は10月24日、ハマスのイスラエル攻撃を糾弾する一方、イスラエル軍が攻撃を続けるガザの現状を「明確な国際人道法違反」と強く非難した。国連総会も同27日に、イスラエル軍やハマスに「人道的休戦」を要請する決議案を121カ国の賛成で採択した。法的拘束力はないものの、イスラエルの軍事作戦を容認しない姿勢を示している。
 しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は同28日「戦争が第2段階」に入ったと表明するなど、攻撃を続ける構えだ。11月4日にはイスラエル軍がガザ市街地に入った。ガザの人道状況はさらに悪化する可能性もある。
 イスラエルとハマスは、停戦を求める国際世論をしっかりと受け止めるべきだ。国連によると、イスラエル軍のガザ攻撃による犠牲者の7割近くが子どもや女性という。攻撃の正当性を主張しても、民間人の犠牲者が拡大する状況では、批判は免れない。
 イスラエルを支持する米国も、ブリンケン国務長官が民間人保護やガザのへの支援物資搬入のための一時的な戦闘中断を訴えている。イスラエルに近い米国こそ、即時停戦の働きかけに動くべきだ。
 一方、日本は国連総会が採択した「人道的休戦」を求める決議案を棄権した。上川陽子外相は「総合的判断」と説明するが、決議案に反対した米国への配慮がなかったか。 日本が、イスラエルとパレスチナとの間でバランス外交を志向するならば、停戦に向けた交渉の仲介などに積極的に取り組むべきだ。それこそが国際社会で日本が果たすべき役割であろう。戦闘が長期化すれば、原油輸入の大半を中東に依存する日本にも悪影響を及ぼしかねない。停戦の実現に向け、日本をはじめ国際社会が一致して動くべきだ。