<社説>米中首脳会談 緊張緩和の一歩とせよ


社会
<社説>米中首脳会談 緊張緩和の一歩とせよ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ウクライナへのロシア侵攻、イスラエルとハマスの戦闘という終わりの見えない戦火が続き、無辜(むこ)の民が傷つく中で2大国の首脳が対話した。世界の動向に大きな影響を与える両国の首脳会談を、分断克服と平和の潮流を生み出す契機としたい。

 バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が1年ぶりに会談し、国防当局や軍高官による対話再開に合意した。人工知能(AI)に関する政府間対話の構築や気候変動対策でも一致した。
 昨年8月のペロシ下院議長(当時)の台湾訪問で断絶した米中両国の国防当局や軍高官の対話の再開にこぎ着けたことは一定の前進である。緊急時には首脳間で直接電話することも申し合わせた。偶発的な軍事衝突を防ぐためのホットラインとして機能することが期待される。
 今回の首脳会談を2国間の危機回避、世界の緊張緩和への一歩としたい。アジア太平洋地域に緊張をもたらす2国間の対立をこれ以上、激化させてはならない。
 4時間の会談でバイデン氏は「競争が衝突に転じないよう管理しなければならない」と表明した。「理解し合い、誤解や行き違いがないようにすることが最重要」とも述べている。習氏は「地球は十分に大きく米中の共存は可能」と述べるとともに、「大国間競争は時代に合わない」と主張し、中国封じ込めをやめるよう訴えた。
 これらのやりとりから、両国が新たな関係を模索していることがうかがえる。融和的な関係を築くような対話をこれからも継続してほしい。
 今回の会談で対立構図が大きく変わったわけではない。台湾を巡って応酬があった。
 バイデン氏が台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を強調し、来年1月の台湾総統選に介入しないよう警告した。それに対し、習氏は、台湾が米中関係で最も敏感な問題だとして「必ず統一する」と答えた。
 今回の会談でも台湾に関する米中対立が解消しなかったことは沖縄にとって深刻な意味を持つ。「台湾有事」を名目とした軍備増強が急速に進み、沖縄の島々が戦場となるような事態を前提とした訓練が続いている。台湾を巡る米中の軍事衝突に沖縄が巻き込まれるようなことがあってはならない。両国に強く自制を求めたい。
 緊張緩和に向けた日本の役割もあるはずだ。習氏との日中首脳会談で岸田文雄首相は、中国による日本周辺での軍事活動に懸念を表明。台湾海峡の平和と安定が国際社会にとって重要と伝えた。習氏は台湾は日中関係の政治的基礎に関わる問題だと強調し「日本は中日関係の基礎を損なわないようにするべきだ」と、日本をけん制した。
 日中関係も沖縄を取り巻く安全保障環境に大きな影響を及ぼす。緊張緩和に向けた対話の継続を求めたい。