<社説>与那原に米船寄港 民間港の軍事利用許すな


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<社説>与那原に米船寄港 民間港の軍事利用許すな
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 与那原町の民間港である与那原マリーナに、米軍船舶が10月29日から11月16日にかけて、給油のため3回寄港していたことが分かった。米軍船舶の与那原マリーナへの寄港は初めてだ。米軍側は今後も使用を望んでいるという。

 昨年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を打ち出しており、日米は双方に拡大することを確認している。県内では、民間の港湾や空港施設の軍事利用が進んでいる。
 県は在沖米海軍艦隊活動司令部に与那原マリーナの使用自粛を求め、与那原町も県を通して寄港しないよう申し入れている。住民の不安は強い。米軍が普段から使用すれば、有事の際、相手国から軍事施設として標的にされる恐れもある。県や町は断固とした態度で米軍船舶の寄港を拒否すべきだ。
 県港湾課によると、寄港した米軍船舶は、全長約15メートルの小型船舶2隻。10月27日に米軍側から寄港したいとの打診があり、県の担当職員が許可したが、その後、11月に2回、港を使用した際の連絡は米軍からなかったという。
 寄港は全て給油目的で、接岸するなどの港湾施設の使用ではないため違法性はなかったというが、連絡もしないで勝手に使い放題にさせてはならない。県は歯止めをかけるべきだ。米軍側も、民間港への寄港をやめるよう求める。
 今年9月には、米海軍の掃海艦が訓練目的で石垣市の石垣港に入港した。台湾有事を想定した民間港利用の「実績づくり」が進行中だ。民間港や民間空港など民間施設の使用が進めば、有事には、基地だけでなく、民間施設も戦闘に巻き込まれる恐れが強まる。
 与那原町の住民からは「地元民として米軍船は来てほしくない。今は静かで平和なのに、昔(沖縄戦当時)を思い起こしてしまう」という不安の声がある。県と町は、こうした不安を重く受け止めなければならない。
 与那原マリーナでは現在、日本セーリング連盟が主催する冬季強化合宿が実施されており、知念高校ヨット部の練習場所でもある。本来の施設利用の在り方や住民の日常生活が脅かされることはあってはならない。
 今回の寄港で県港湾課は、基地対策を担当する知事公室など関係部局への情報共有が遅れたため米軍への自粛要請も遅れた。その上、与那原町に寄港を報告していなかった。連絡体制がずさんというほかない。照屋勉与那原町長が県に抗議したのも当然だ。県は早期に改善し、再発防止を徹底してほしい。
 今回の問題は、給油目的であっても軍事利用であることに変わりはない。県内で民間施設の軍事利用が進む中、自粛要請では生ぬるい。港湾の管理者である県は、軍事利用を許さないという強い態度を日米両政府に示すべきだ。