<社説>ガザ全域戦闘地域に 一致して再休戦の実現を


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<社説>ガザ全域戦闘地域に 一致して再休戦の実現を
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 パレスチナ自治区ガザ全域が戦闘地域となった。このままでは民間人被害の拡大は避けられない。国際社会の連携で一刻も早く再度の戦闘休止合意を整え、停戦の実現を急がなければならない。

 イスラム組織ハマスの壊滅を目指すイスラエル軍はガザ南部の最大都市ハンユニスに侵攻した。北部でも戦闘が続いている。4日には北部の二つの学校がイスラエル軍によって空爆され、少なくとも50人が死亡した。
 11月24日に始まった戦闘休止は2度の延長を経て7日間で終わり、12月1日に戦闘が再開された。イスラエル軍の空爆は休戦前より激しさを増しているとされる。ガザ保健当局によるとガザ側の死者が1万6200人を超えた。イスラエル側の死者は約1200人に上る。
 国連によると、ガザ南部の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の施設で避難生活を送る住民は95万8千人。イスラエルの勧告に従い、北部から避難した人々も多い。軍は住民に大規模な退避を要求しているが、インターネットの接続が悪く、避難情報も十分には得られないという。ガザ全域が危機的な状況に陥っている。
 イスラエル首相府は「ハマス掃討や人質全員奪還などの目的達成を誓う」と発表した。ハマスも「敵に立ち向かう」と強調するなど、互いに対決姿勢を強めている。このままではガザ南部での戦闘が長期化する恐れもある。
 カタールが仲介役となり、決裂した戦闘休止合意の再建交渉を続けるが、イスラエルとハマスの対立は根深く合意は見通せない。支援物資の配給も地上侵攻によって輸送ルートが断たれている。人道危機がかつてないほどに高まっているのだ。
 ガザ住民からはハマスに対して本格的停戦を求める声が上がっている。イスラエル政府も兵士の死傷者増加で世論の強い圧力を受けているという。国連総会は10月に「人道的休戦」を求める決議案を121カ国の賛成で採択していた。再び国際社会が一致して動くべき時である。
 日本政府は、親イスラエルの米国と中東諸国に配慮する「バランス外交」の立場を取ってきた。先の国連総会決議は米国に配慮し、棄権している。その後、東京で開催された先進7カ国(G7)外相会合で日本は「人道支援を可能にするための戦闘の人道的休止」を支持する声明を議長国として取りまとめている。
 ガザ南部での戦闘拡大や作戦の長期化に対し、国際社会は危機感をもって臨むべきだ。戦闘再開前日にイスラエルを再訪したブリンケン米国務長官自身がその懸念を表明したという。いま急ぐべきは再度の休戦の実現である。
 日本は米国追従を改め、休戦を働きかける必要がある。日米が真に対等なパートナーならば、両国関係において明確に停戦を提起すべきだ。