当然の措置とはいえ、釈然としない。なぜこのような判断に至ったのか明確な説明を求めたい。
鹿児島県・屋久島沖の米空軍輸送機CV22オスプレイ墜落事故を受け、米軍は空軍のほか海軍、海兵隊を含め全オスプレイの飛行を一時停止すると発表した。普天間飛行場に所属するMV22オスプレイも飛行停止の対象となる。
2016年12月には名護市安部に普天間所属のMV22が墜落した。人命に関わる重大事故を恐れてきた県民にとって、飛行停止は遅すぎるくらいだ。屋久島沖での墜落事故から8日後の措置には疑問も残る。なぜ、事故直後に飛行を止めなかったのか。玉城デニー知事が言うように「対応にタイムラグ」があるのだ。
乗員8人の死亡はオスプレイの事故として最多である。今年8月にはMV22がオーストラリアで墜落し3人が死亡した。昨年6月には米カリフォルニア州でMV22が墜落し5人が死亡。2017年8月に普天間所属のMV22がオーストラリア東部海上に墜落し、3人が死亡した。
今回の墜落事故でバイデン米大統領は5日、「米国全体が悲劇的な死を悼んでいる」と弔意を表した。多くの乗員の生命を奪ってきたオスプレイに対する米国内の世論は厳しいはずである。今回の全面飛行停止はこのような国内事情が影響した可能性もある。
看過できない重大欠陥が判明したのなら、そのことを公開すべきである。当然、オスプレイを配備する陸上自衛隊とも情報を共有すべきだ。そして「安全を確認した」などとして安易に飛行を再開してはならない。私たちが求めるのは日本国内からの欠陥機オスプレイ撤退である。
全面飛行停止に関しては日本政府の説明も必要だ。
8人死亡という大惨事にもかかわらず、日本政府はオスプレイ飛行停止を明確に要求しなかった。「安全が確認されてから飛行するよう」求めるというあいまいな態度に終始してきた。米国防総省のシン副報道官は「私が知る限り、正式な(飛行停止)要請を受けていない」と語っているのだ。日本政府の意向は事実上無視されたのである。
日本政府は飛行停止に関して米側からどのような説明を受けたのか。米側の判断について日本側から何らかの働き掛けをしたのか。それとも米側の自主的な判断なのか。これらの点について日本政府の説明を求めたい。
歴代の首相や閣僚は事あるごとに「強固な日米同盟」を誇ってきた。重大事故に関して何ら要求ができないのでは対等な同盟関係とは言えない。米国に付き従うだけの主従関係でしかないのだ。
オスプレイ墜落事故は「日本は主権国家なのか」という根源的な問題をあぶり出した。期限なきオスプレイ飛行停止と撤退を明確に米側に迫ることが主権国家の最低限の責務であるはずだ。