<社説>柿沢衆院議員逮捕 政治改革への本気度示せ


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<社説>柿沢衆院議員逮捕 政治改革への本気度示せ
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 政治に対する信頼が崩れた1年となった。

 4月の東京都江東区長選を巡り計約330万円の買収目的の資金を提供するなどしたとして、東京地検特捜部は公職選挙法違反の疑いで、前法務副大臣で衆院議員の柿沢未途容疑者と秘書4人を逮捕した。特捜部は木村弥生前区長を当選させるため、柿沢容疑者が買収を主導したとみて調べている。
 逮捕前の任意聴取では容疑を否認しているという。捜査を尽くし全容解明してほしい。
 事件の発端は、4月の江東区長選で当選した木村氏側が、有料のインターネット広告をユーチューブに掲載したとされる公選法違反事件だ。柿沢容疑者が木村氏側に提案したことを認め、法務副大臣を辞任。その後、区議らへの現金配布の疑いが発覚、特捜部が地元事務所や議員会館事務所などを家宅捜索した。12月には自民党を離党した。
 柿沢容疑者は区議らに配布した現金を「陣中見舞い」と主張しているが、選挙の公正さに疑いを持たれる行為ではないか。
 2019年の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件では、東京地裁が河井克行元法相に実刑判決を言い渡した。今回、前法務副大臣が公選法違反容疑で逮捕されたことは、法治国家への信頼すら揺るがしかねない事態だ。
 現職国会議員の逮捕は今年2人目となる。9月には洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、秋本真利衆院議員が逮捕、起訴された。秋本被告は家宅捜索を受け、8月に外務政務官を辞任、自民党も離党した。政務三役が疑惑を持たれ、逮捕が相次いだことは、岸田文雄首相の任命責任も厳しく問わなければならない。
 「政治とカネ」では、自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、池田佳隆衆院議員、大野泰正参院議員に強制捜査が入った。特捜部は政治資金規正法違反(不記載など)の疑いで捜査している。
 一連の裏金疑惑で問われるべきは、その金が何に使われたのかという点だ。柿沢容疑者の事件などとも共通するが、政治や選挙に使われる資金の不透明さが、政治不信を招く要因となっていることを自覚する必要がある。
 渦中にある議員らからは、明確な説明責任すら果たされておらず、議員としての資質にも疑問符が付く。
 政治不信の払拭には政治資金規正法の罰則強化など、国民の信頼を得られる政治改革が必要だ。岸田首相は改革に向けた党の新組織を年明けに設置するよう指示したが、あまりに遅く、本気度が伝わってこない。野党も政権批判だけに終わらせず、党派を超えた政治改革を目指すべきだ。
 この1年で増殖した国民の政治不信を解消できるのかが問われている。来年を新たな政治改革元年とするような議論を求めたい。