<社説>2023年回顧 破壊を再生につなげよう


社会
<社説>2023年回顧 破壊を再生につなげよう
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 2023年はきょう大みそかを迎えた。平和と民主主義、そして地方自治の破壊を繰り返した1年ではなかったか。

 世界情勢を見れば、ウクライナ戦争が長期化し、パレスチナ自治区ガザでの戦闘も続いている。戦争を巡り、世界の分断が顕著になった。沖縄では「台湾有事」を想定した自衛隊配備強化が進む中、辺野古新基地建設に向けて大浦湾の軟弱地盤工事の設計変更申請を県に代わって国が承認する代執行が史上初めて実施された。地方自治を壊す暴挙だ。自民党安倍派の政治資金パーティー券を巡る疑惑は政治への信頼を壊している。
 今年は、こうした問題に直面し、いかに破壊を再生につなげられるかが問われた年だったといえよう。
 辺野古新基地建設を巡る国と県の対立は重大な局面を迎えている。国は代執行後、来年1月12日にも大浦湾側の工事に着手するとみられている。国が提起した代執行訴訟で司法がお墨付きを与え、政治、行政、司法による沖縄への構造的差別が鮮明になった。ミサイル部隊など自衛隊の配備も進み、港湾や空港など公共施設まで軍事利用されている。
 そんな中、沖縄の軍事化に反対し、対話による平和の構築を世界へと発信する「県民平和大集会」が11月に開かれ、主催者発表で1万人以上が参加した。沖縄が二度と戦争の被害者にも加害者にもならないようにと願いを込め「全国と全世界と団結して戦争を止める決意を内外に発信する」と宣言した。
 経済の面では、新型コロナウイルスの5類移行によって行動制限のない祭りやイベントが各地で通常開催され、沖縄観光も回復しつつある。ただ、修学旅行のバス運転手不足や、空港関係者の人員が足りず国際線の復便ができないなど、観光業界の人手不足が顕在化している。沖縄経済「再生」に向けた課題である。
 新型コロナの感染拡大による経済停滞は、世帯収入減や就労環境を悪化させ、困窮層の拡大につながった。22年度沖縄子ども調査「高校生調査報告書」では前回の19年度調査と比べ困窮層の割合が5・9ポイント増え、26・3%となった。子どもの貧困は親の貧困の問題だ。経済の再生を貧困の解消にどうつなげるかが重要となっている。
 7月末から8月初旬にかけて沖縄地方を2度にわたって襲った台風6号は県内世帯の34%を停電させるなど甚大な被害をもたらした。台風の複雑な動きは、地球温暖化との影響が指摘されている。今年は例年よりも増して暑かった。地球の悲鳴を肌で感じた1年だった。有害な紫外線から生態系を守るオゾン層の破壊をどう食い止めるか、人類の課題は切迫している。
 来年はこうした多くの問題を乗り越える「再生」への道筋をつけたい。沖縄の「命どぅ宝」の思想はその原点となろう。「人間の安全保障」が今、求められている。