多くの難題が待ち受けていよう。それを力強く乗り越え、展望を切り開く年としたい。これまでもさまざまな困難を克服してきた県民には、その力があると信じる。
2024年が幕を開けた。県民は、さまざまな思いで新年を迎えたであろう。穏やかな気持ちで日々を過ごしたい。そして、創造的な1年となるよう願う。
旧年の出来事を漢字1文字で例えれば「壊」であり、「崩」であった。昨年末の辺野古新基地の設計変更承認を巡る国との攻防は県民にとって厳しい結果であった。この過程で私たちが直面したのは地方自治の破壊であった。
地方の意思を軽んじる戦前の強固な中央集権に対する反省を踏まえ、戦後築き上げた地方自治を崩そうという動きが顕在化したのである。
沖縄の島々で急速に進む軍備強化は平和で豊かな県民生活を壊すものだ。戦争準備とも言うべき危険な動きに歯止めをかけなければならない。
焦土に立ち、平和の尊さを実感した敗戦体験を忘れず、憲法に規定された戦争放棄を守り抜く国づくりの骨格が崩れ落ちようとしているのだ。私たちはこの危機的状況と直面していることをしっかりと認識したい。
ここで時計の針を80年前に戻したい。
1944年、沖縄は戦時体制の構築が急速に進んだ年である。この年3月、沖縄戦を指揮した32軍が創設された。5月から島々で飛行場建設が本格化し、夏以降は日本軍が次々と駐屯した。兵員確保、陣地構築に向けた「根こそぎ動員」が強行された。国家・軍の意思が優先し、県民を戦場に駆り立てたのだ。
疎開児童を乗せた対馬丸の撃沈、島々を襲った10・10空襲もこの年である。
80年前の出来事と今日の動きを重ねつつ、戦後80年という節目を見据え、この1年の誓いを立てるならば「平和の構築」であり、「平和の創造」であろう。戦後の激動を歩んできた沖縄が取り組むべき課題でもある。困難に直面しても県民の心は折れはしない。さまざまな経験によって、県民は時代の転換点に柔軟に応じ、活路を開くしなやかさと強さを育んできたはずだ。
経済再生に一層の加速をつける年である。コロナ禍で大きな痛手を負った県経済は、復活に向けた歩みを重ねている。それをより確かなものにするため、深刻な人手不足にも取り組まなければならない。働きやすい職場づくりは県経済発展の土台である。
そして、せわしい暮らしの中で身の回りを見つめたい。人知れず苦境に陥っている子どもはいないか。「子どもの貧困」の問題はいまだ解決の途上にある。子どもたちを支える地域社会の再構築がかぎとなろう。
私たちは時代の分岐点に立っている。過去の歩みを振り返り、自らの意思で過ちのない未来を選択したい。
<社説>2024年を迎える 歴史見据え、平和の構築を
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琉球新報社