<社説>表現の自由 国は弾圧を直ちにやめよ


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 この国の表現の自由が深刻な危機にさらされている。危機に陥らせた当事者はむろん政府だ。その深刻度は沖縄で極点に達している。

 デービッド・ケイ国連特別報告者(米国)が日本の表現の自由に関する暫定調査結果を発表した。特に沖縄に言及し、名護市辺野古の新基地建設に抵抗する市民に対して政府が「過度な権力を行使している」と指摘した。
 辺野古では、つい先日まで市民が自由に航行できた海域で、海上保安官が市民に馬乗りになり、船を転覆させている。つい先日まで自由に歩けた国道そばの空間に、市民が誤って一歩踏み込んだだけで、軍の警備員が無理やり引きずり、拘束する。抗議する市民を警察がごぼう抜きにし、市民の側にけが人が続出している。民主国家にあるまじき、独裁国家と見まがう光景だ。
 ケイ氏は国際人権法や国際人道法の専門家だ。報告は、辺野古での暴力的警備が、国際標準に照らせば明確な人権侵害だということを示している。政府は恥ずべき弾圧を直ちにやめるべきだ。
 ケイ氏は既に警察庁や海上保安庁に「懸念」を伝え、「われわれは今後も監視・追及する」と述べている。弾圧をやめない限り、政府は国際的な非難を受けるだろう。
 さらにケイ氏は沖縄2紙への政治家らの圧力発言について「非常に重大な問題だ。今後包括的に調査していく」と述べている。表現の自由の危機が沖縄では全国より深刻であることの表れだろう。
 ケイ氏はテレビ局への圧力などを挙げ、日本ではメディアの独立が深刻な脅威に直面しているとも指摘した。高市早苗総務相が放送法4条に基づく電波停止の可能性を示唆した点にも懸念を示した。氏が提言したように、放送法4条は廃止すべきだ。特定秘密保護法も、氏が指摘した記者の非処罰の明文化も含め、全面的に法改正するか、法そのものを廃止すべきだ。
 表現の自由がなぜ重要か。制度が不適切だと分かれば、民主国家だと選挙で改めることができる。だが表現の自由がなければ、そもそも選挙の前提となる情報が国民に隠され、選挙で改めることができなくなる。民主国家の根底が崩されるのだ。
 表現の自由は米軍統治下の沖縄では長く許されなかった。先人たちが体を張って築き上げた大切な権利である。その偉大な遺産を失ってはならない。