<社説>能登半島地震 被災者支援の拡充を急げ


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<社説>能登半島地震 被災者支援の拡充を急げ
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 石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震は、被害が続々と判明し、死者数が増え続けている。まずは被害状況の全容把握を急ぐとともに、必要な支援の拡大、拡充に備える必要がある。

 国土地理院によると、地震によって輪島市が西に1・24メートル動くなど、地殻変動が確認された。地震規模のすさまじさを見せつけるものだ。被害は石川県内にとどまらず、富山、福井、岐阜などにも広がっている。津波も襲来し、2日午前まで注意報が継続された。建物の崩壊も発生し、消防による捜索活動が続く。
 元日の発生には驚かされた。災害はいつ起こるか分からないということをまざまざと感じさせる地震であった。犠牲になった方のご冥福を祈るとともに被災された方々にお見舞いを申し上げたい。
 新年を祝う1日午後4時ごろの発生であった。夜を迎えても余震が継続した。連続する緊急地震速報、津波に関する警報や注意報の継続に被災地の方々は眠れぬ夜を過ごしたであろう。
 今後の余震によって、さらに建物の倒壊や地盤の崩壊が起きるかもしれない。被害の拡大を最優先して食い止めなければならない。1週間程度は同規模の震度7程度の余震の可能性があるという。十分な警戒が必要である。
 元日のため事業所などはそれほど人はいなかったと考えられる。一方、住宅にいて地震に遭った人は多いのではないか。被害の全容把握には時間がかかるかもしれない。
 寒い季節の避難生活となる。高齢者や障がいのある方々への支援は十分だろうか。断水が続いている。飲料水の確保が不可欠だ。聴覚障がいのある方へは、ウェブを通じて通訳者とつながるシステムが提供されたという。障がいの種類に応じて対応可能なサービスの周知が必要だ。
 ケアの質も問われそうだ。大学受験生にとっては共通テストがさし迫り、まさに正月抜きで追い込みの最中である。被災地で暮らす受験生の精神的な影響が懸念される。被災が過度な負担につながってはならない。避難生活の長期化が受験に不利に働くことがないよう、何らかの配慮が求められる。
 この非常時に被害に関する虚偽の情報が出回っている。SNSなどで東日本大震災の津波動画を今回の被害のようにして掲示しているもの、「助けて」などと発信し、募金をかたるサイトへとつなげるものもあるという。被災者を傷つけ、支援が行き渡ることを阻害するような行為であり、すぐにやめるべきだ。
 物資支援については関係省庁幹部が現地に入り調整に当たる。物資だけでなく、トータルケアへの対応を拡充してもらいたい。
 被災地から離れた沖縄であるが、今後必要とされる支援に備えたい。そしてこの地でもいつ起こるか分からないということも肝に銘じよう。