<社説>日航機、海保機衝突 原因究明し再発防止策を


社会
<社説>日航機、海保機衝突 原因究明し再発防止策を
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本の航空史上まれに見る大事故が起きた。原因究明を徹底し、二度とこのような事故が起きないよう再発防止策を確立しなければならない。

 羽田空港で2日夕、札幌発羽田行き日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突し、炎上した。日航機の乗員乗客379人は脱出した。海保機の乗員5人が死亡し、機長が重傷を負った。
 これだけの大惨事で日航機の乗員乗客に犠牲者が出なかったのは奇跡的である。限られた時間で乗客を機外へ誘導できたのは乗員の日常的な訓練のおかげだと言えよう。乗客も冷静に行動したのではないか。
 海保機は能登半島地震の対応で救援物資を搬送する途中であった。乗員は強い使命感で被災地支援の任務に臨んでいたであろう。支援活動の中で起きた痛恨の事故である。命を落とした乗員の冥福を祈るとともに機長の回復を待ちたい。
 航空機が滑走路上で衝突するという通常では考えられない事故である。日航機が着陸した際、なぜ海保機が滑走路上にあったのか究明しなければならない。管制官と2機との間でどのようなやりとりがあったかが焦点となる。
 日航の乗務員は管制から得た着陸許可を復唱した後、着陸操作をしたと会社側に説明している。国土交通省が公表した交信記録によると、管制は「滑走路停止位置まで地上走行してください」と海保機に伝えている。海上保安庁によると、海保機の機長は許可を得た上で「滑走路に進入した」と説明しており、認識が食い違っている。
 事故を調べる運輸安全委員会は海保機のフライトレコーダーとボイスレコーダーを回収している。分析によって事故原因の究明が進むはずだ。過去にも無線の混信や聞き間違いで事故が起きている。管制と乗員との交信で人為的なミスをどう防ぐかが再発防止策の要となるはずだ。
 一つ間違えれば重大な事故につながりかねないだけに、管制と乗員の交信は緊張を伴う。今回の羽田空港など航空機の発着が多く、管制業務が過密な空港でなおさらだ。
 那覇空港でも1985年5月、着陸後に滑走路を走行していた全日空機と自衛隊機が接触する事故が起きている。乗客204人にけがはなかったが、今回のような大事故になりかねなかった。管制官が離陸許可を出していないにもかかわらず指示を誤認し、周囲の安全を確認しないまま滑走路上に自衛隊機を進めたことが事故原因とされた。
 この事故では民航機と自衛隊の共同利用という那覇空港の危険性も指摘された。滑走路が2本になっても、この課題は現在も変わらない。
 航空機の運航と空港の運営は最大限に安全を追求しなければならない。今回の事故から教訓を引き出し、さらなる安全性向上に努めなければならない。