<社説>県内政局展望 政治力発揮で困難克服を


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<社説>県内政局展望 政治力発揮で困難克服を
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 沖縄を取り巻く政治状況は一層厳しさを増している。

 辺野古新基地建設に向けた設計変更申請承認を巡る県と国との対立は、沖縄の民意に基づく県の意思決定を政府が覆し、それを司法が追認するという結末となった。沖縄の地方自治が否定されたのだ。
 「台湾有事」を名目とした急激な軍備増強が県内の島々で進んでいる。防衛力の強化を目的とした公共インフラ整備も警戒しなければならない動きだ。県内の空港・港湾12施設が対象となっている。1972年の施政権返還から今日まで続く沖縄振興の在り方をゆがめる恐れがある。
 他方、コロナ禍以降の経済回復の足かせとなっている人材不足、ロシアのウクライナ侵攻以降の燃料費高騰や資材高騰など、さまざまな課題を抱えている。教育現場における教員不足も克服を急がなければならない課題だ。「こどもの貧困」は、まだ解決の途上にある。
 これらの困難や課題にどう向き合い、克服していくか、沖縄の政治力が問われている。沖縄の置かれた政治状況、県内外に横たわるさまざまな課題を県民、有権者が直視し、沖縄の進む道を選択しなければならない。
 自分たちのことは自分たちで決める。その第一歩が言うまでもなく選挙である。私たちには投票を通じて自らの意思を表明し、沖縄の将来を築いていくことが求められる。
 今年は県議会議員選挙が6月に実施される。2024年の県内政局の最大の焦点であり、22年9月に再選された玉城デニー県政の中間評価にも位置付けられる。
 琉球新報社の調べでは67人が出馬の動きを見せている。選挙区ごとの論戦を通じて地域の課題が浮き彫りとなるはずだ。候補者は公約を掲げ、望ましい地域の姿や将来展望を有権者に提示し、論戦を交わすことが求められる。辺野古新基地建設に対する立場も明確に示すべきだ。有権者はそれらを吟味し、沖縄県全体や住んでいる地域の将来を考え、投票に生かしてほしい。
 今年は、糸満市長選など9市町村で首長選や議会議員選挙がある。近年の首長選では無投票となるケースがある。候補者が公約を示し、論戦を交わすことなく首長が決まることは望ましい姿ではない。有権者の投票の機会を確保する上でも、選挙を実施することが必要だ。
 衆院解散・総選挙の動きも注視しなければならない。岸田文雄政権の支持率が低迷する中で、自民党派閥のパーティー券還流の問題が表沙汰になった。「政治と金」の問題が厳しく問われている。
 総選挙となった場合、失墜した政治への信頼回復が重要な争点となるであろう。県内4選挙区で、15人が立候補を表明している。
 県内選挙では投票率の低迷が続いている。有権者は自らの権利を放棄することなく、投票所に足を運んでほしい。