<社説>2024年経済展望 経済活動の基盤は平和


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<社説>2024年経済展望 経済活動の基盤は平和
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 ウクライナやガザで戦争が続くなど、混迷が続く国際情勢が沖縄経済に影を落とす中、新しい年を迎えた。

 今後、沖縄に影響を及ぼしかねないのが米中のにらみ合いだ。中国の習近平政権の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するため、米バイデン政権は同盟・友好諸国と連携した「経済回廊」構想を打ち出している。双方とも安全保障を念頭に置いた国家戦略という側面があるが、覇権主義的な対立は世界の分断につながりかねず、経済をさらに冷え込ませる懸念がある。
 天然資源が乏しい日本や沖縄は、近隣諸国との交流や物流の自由度が低ければ経済的苦境に直面する。
 東アジアの結節点にある地理的優位性を生かし、万国津梁の精神でアジアの懸け橋として役割を果たすことが自立型経済に向けた沖縄の成長戦略だ。その妨げになる恐れのある現代版のブロック経済の動きを警戒する必要がある。
 日本は中東に石油供給の8割を依存している。ガザの混乱が拡大すれば、日本経済は大きな打撃を受ける恐れがある。エネルギー危機が収束しなければ、米欧のインフレと金融引き締めが拡大し、さらに世界経済を冷え込ませることが予想される。
 リーディング産業である観光を中心に、コロナ前の活況に戻りつつあるが、コロナを機に資源高や為替相場の変動など外的要因に沖縄経済は脆弱(ぜいじゃく)だということが改めて浮き彫りとなった。円安を背景にした餌や肥料代の高騰が県内の畜産農家を直撃している。電気料金に転化される化石燃料高が今後も続けば、事業者の経営基盤をさらに揺るがしかねない。
 輸入に過度に依存した食料やエネルギーの自給率を高めることの重要性を多くの県民が再認識したはずだ。外的要因の影響を少しでも減らすため、再生可能エネルギーの導入を推進していくべきだ。
 県は今年5月使用分まで県内全ての受電契約者を対象に支援を延長することを決めたが、それ以降の支援継続は決まっておらず、家計や企業活動に大きな負担となる可能性がある。さらに物価高や増税による不安要素も多い。防衛費増額のための増税が、景気の足を引っ張ることになる可能性もある。
 本格的な経済回復が見込まれる県内の各産業だが、コロナ禍で離職した人材の戻りが追い付かず、人手不足が大きな課題になっている。産業界全体で従来の仕事の質と量を総点検し、待遇改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などによってより効率的な業務の在り方を追求する年になろう。
 混沌(こんとん)とする世界情勢の中で実感することは、平和こそ経済活動の基盤だということだ。平和を愛する沖縄の心を大切にし、県外・国外との交流の促進と販路拡大によって県経済を確実に成長経路に乗せていくことが求められる。