石川県で最大震度7を観測した能登半島地震の発生から、8日で1週間となった。7日午後2時現在で、亡くなった人は128人、安否が分からない人は195人に上る。避難者は7日時点で2万8千人を超える。余震とみられる揺れが続き、避難生活も長期化する恐れがある。引き続き捜索活動や被災者支援に全力を挙げてほしい。
1週間が経過するが、被害の全容が依然見えず、支援物資も十分行き届いていないのが現状だ。
その要因は、能登半島の地形も関係している。道路が限られている半島北部の珠洲市や輪島市などへの陸路は土砂崩れや亀裂で通行不能となっている。孤立集落や市街地郊外などへのアクセスが困難となっており、安否確認が済んでいない地域も依然残っているという。
物資搬送では道路寸断のため車両が入れないほか、港は周辺の海底が隆起し船舶が接岸できない状態だ。能登空港も滑走路のひび割れで閉鎖している。自衛隊の輸送で支援物資は行き渡り始めているが、厳しい寒さに見舞われている被災者にとって十分ではない。入浴やトイレなど衛生面の懸念もある。
政府は5日、被災地対応に当たる自衛隊員を約5千人に拡充した。消防や警察も応援を派遣しており、必要な人員を確保し被災者支援に万全を尽くしてほしい。ニーズに即した支援へ行政と民間との連携もさらに深めるべきだ。
一方、地震発生の1日には日本海側で津波が観測された。輪島港では1日午後4時21分に高さ1.2メートルを観測したが、東北大の今村文彦教授(津波工学)の分析では、珠洲市や輪島市は4メートル程度の津波に襲われた可能性があるという。日本海側の津波は太平洋側に比べ到達が早く、大陸と日本列島で反射し、何度も押し寄せてくる特徴がある。津波被害の実態把握にも取り組まねばならない。
能登半島の地形が被災者支援などに影響を及ぼしているが、被害想定は果たして適切だったのか。1998年に石川県が策定した能登半島沖の断層による地震被害想定では、マグニチュード(M)7.0の地震が発生するが「災害度は低い」と見ていた。
能登半島周辺では、約3年前から先端の珠洲市を中心に群発地震が発生している。東日本大震災、熊本地震など「想定外」の大規模地震も起きている。被害想定や防災計画を早期に見直す機会はあったはずだ。行政側の危機意識の欠如は否めない。
沖縄県の地域防災計画では、地震・津波の被害想定はM9.0で津波の最大遡上高を那覇空港で11メートルなどとしている。海に囲まれた沖縄本島や離島では、大規模災害に遭った際の避難、被災者支援の手段は限られている。沖縄の地理的特性を考慮し、「想定外」の事態にも対処できるよう不断の見直しが必要だ。