<社説>ガザ戦闘拡大 国際社会で停戦に全力を


社会
<社説>ガザ戦闘拡大 国際社会で停戦に全力を
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は開始から3カ月が過ぎた。これ以上戦火が拡大し犠牲者が増えないよう、国際社会は一致団結して即時停戦に向け全力を挙げるべきだ。

 バイデン米大統領は昨年12月、ガザでハマス掃討を続けるイスラエルに「無差別爆撃で国際社会の支持を失い始めている」と警告した。国連総会も同月12日に、ガザでの即時停戦を求める決議案を採択した。総会が人道的休戦を要請する決議を採択した10月下旬に比べ、賛成国が30カ国以上増えた。
 それにもかかわらず、ハマスの壊滅を掲げるイスラエル軍は、学校への空爆や病院を急襲するなど民間人も巻き込む攻撃を続けている。ガザ北部で制圧地域を広げながら、中部や南部の作戦に集中しており、民間人の被害は一層深刻化している。
 ガザ保健当局は9日、戦闘によるガザ側の死者は2万3210人と発表した。うち7割強が戦闘に無関係の女性と子どもだという。
 イスラエルの軍事作戦が国際的支持を失っていることは明らかだ。しかし、イスラエルは強硬姿勢を変えず、周辺国内にいる対抗組織への攻撃で緊張をより高めている。
 イスラエル・レバノン国境ではハマスを支援する親イラン系組織ヒズボラとイスラエル軍との交戦が激化している。先月25日、シリアの首都ダマスカス郊外でイランの革命防衛隊幹部が空爆で死亡した。2日には、レバノンの首都ベイルート南部でハマスの政治部門幹部サレハ・アルーリ氏らが無人機攻撃で殺害された。
 シリア、レバノン当局はイスラエルの攻撃と断定し、「主権侵害」と非難している。その後もレバノンでヒズボラの幹部司令官がイスラエルの空爆で殺害された。ヒズボラは報復としてイスラエル軍の拠点を無人機で攻撃した。攻撃の応酬で、ハマスなどがガザで拘束する人質の解放交渉は極めて難しくなった。
 現時点では中東の周辺国は軍事行動には消極的だ。だが、イスラエルと周辺の中東諸国の戦争は過去に4度も起きている。イスラエルの軍事行動がエスカレートすれば、これまで後ろ盾となって報復攻撃に一定の理解を示してきた米国まで戦争の泥沼に引き込まれかねない。
 中東全域に戦火が飛び火すれば犠牲者はさらに増えることは必至だ。
 イエメンの親イラン武装組織フーシ派は紅海でイスラエル関連船舶への攻撃を続けており、火種がくすぶっている。中東の緊張緩和は急務だ。イスラエルを「特別な関係」と位置づける米国は、軍事行動の抑制を求めるべきだ。
 日本は「対等な日米関係」を掲げるなら、ガザ地区での停戦を働き掛けるよう米国に要求し、戦闘に加担しないことを約束させるべきだ。