<社説>能登地震関連死増加 助かった命を全力で守れ


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<社説>能登地震関連死増加 助かった命を全力で守れ
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 能登半島地震が発生して2週間が過ぎた。自衛隊、消防、警察や、民間の全国的支援は徐々に被災地に届いているが、道路の寸断による孤立地区などで被災者の状況は限界にある。15日午後2時の時点で、石川県内で222人の死亡が確認され、うち14人が災害関連死だ。災害関連死は9日に初めて6人と報告され、日に日に増えている。政府は、助かった命を守るために全力を挙げるべきだ。

 2週間を過ぎて、ようやく被害の全貌が見えつつある。一時300人を超えていた安否不明者はかなり減った。しかしなお22人の安否が分かっていない。輪島市の約200棟が焼けた「輪島朝市」などで懸命の捜索が続いているが、重機が入れず捜索が手つかずの地域もある。
 交通アクセスが悪く、真冬の寒さの中で、各地の避難所は極めて厳しい状態だ。車中やビニールハウスなどで寒さに耐えている被災者もいる。このような状態は直ちに解消しなければならない。
 道路や水道などインフラ復旧の見通しが立たない中、2次避難の動きが目立ってきた。輪島市などでは、保護者の同意を得て中学生を集団避難させる。家族がばらばらになることで精神的負担が心配される。高齢者や障害者の2次避難も、住み慣れた土地を離れ、人間関係が変わることがストレスになる。
 災害関連死という概念は1995年の阪神大震災で生まれた。提唱した上田耕蔵神戸協同病院院長は、2011年の東日本大震災や16年の熊本地震での関連死の発生場所について「避難所は全体の約2割、自宅や車中泊が4~5割、高齢者施設や病院が約3割という傾向があった」とし「避難所の対策だけ進めても、関連死がなくなるわけではない」と述べている。
 さらに、被災地から離れた宿泊施設などへの2次避難について「東京電力福島第1原発事故の福島県でそうだったように、移送を経て亡くなる人が多いので注意が必要だ」と指摘している。
 インフラ復旧のめどが立たず仮設住宅の建設にも時間がかかる以上、当面は2次避難に力を注がざるを得ない。2次避難先で万全のケアをする態勢づくりに総力を挙げなければならない。
 沖縄県内でも被災地を支援する動きが広がっている。支援と併せて、この際に県民にとって人ごとではないと捉え、しっかりと考えたい。
 昨年の台風6号は沖縄県内の34%の世帯で停電を引き起こし、長期間の停電、断水に見舞われた地域もあった。沖縄の離島や山間地は能登半島と同様に交通インフラが脆弱(ぜいじゃく)で気象の影響を受けやすい。津波の危険はもっと大きい。
 沖縄が強い地震に襲われた時、どうするか。被害想定はもとより、避難方法、水や食料、燃料の備蓄、通信手段の確保など、今回の地震を教訓とすべきことは多くある。