<社説>陸自訓練場整備計画 地元区の反対決議は重い


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<社説>陸自訓練場整備計画 地元区の反対決議は重い
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 防衛省が、うるま市石川の東山カントリークラブ跡地一帯に陸上自衛隊の訓練場を整備する計画を進めている。20ヘクタールの土地を買い上げ、地対空・地対艦誘導弾(ミサイル)部隊の展開訓練、迫撃砲の取り扱い訓練、戦闘訓練などの実施を想定しているという。

 岸田内閣は土地取得費を盛り込んだ2024年度予算案を閣議決定したが、閣議決定の当日まで、防衛省は市や区に対して詳しい説明をしていなかった。地元の旭区で14日に臨時総会が開かれ、全会一致で建設計画反対を決議した。住民からは「訓練によって生活が壊される」「戦争につながる道具はいらない」などの声が上がった。当然である。
 戦後、沖縄には米軍基地の過重な負担が集中してきた。戦争の準備をする軍事施設に対する警戒感は、たとえ自衛隊施設であっても根強い。直接影響を受ける地元の反対決議は重い。旭区の切実な訴えに向き合い、国は計画を白紙に戻すべきだ。
 住民が不安を訴えるのは、当然保障されるべき「安心して暮らせる権利」が、戦闘訓練が実施される施設が自宅近くに来ることによって脅かされかねないからだ。
 防衛省は実弾は使用しないとしているが、事前説明を避けるような地元軽視の姿勢のままでは、いつ危険な訓練が強行されてもおかしくない。臨時総会では区民から「非常にばかにしている。民主主義はないのか」「実弾が使われるのではないか」との声も上がった。地元住民に対し、十分な情報を提供しないまま計画を推し進めようとする国への強い不信の表れだ。
 木原稔防衛相は会見で、旭区自治会が全会一致で反対決議を採択したことについて問われ「(計画を)見直す考えはない」とした上で、市や地元に対して丁寧な説明や適切な情報提供などを行うとした。だが、具体的な説明会を開催する予定はないという。驚きを禁じ得ない。
 生活環境が激変しかねない新たな訓練施設を不安視する市民の訴えを、うるま市はしっかりと受け止めなければならない。
 現時点で中村正人市長は「地権者と防衛省の土地売買に関わるため市長としてコメントできない」と述べるにとどめている。事前説明がなかったことに対しては「地権者との関係で慎重になっていたのだろう」としている。
 住宅地に隣接する地に計画された自衛隊訓練場に対する区民の不安に市は真摯(しんし)に向き合うべきだ。同時に、防衛省から詳しい計画の説明を受け、市としての対応を決める必要がある。区民まかせにしてはいけない。
 うるま市では、勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊配備に伴う施設整備も計画されている。米軍キャンプ・コートニーやホワイトビーチなど軍事施設に広大な土地を占有されている市に、これ以上の負担を強いてはならない。