102年の党の歴史で初めての女性委員長就任である。党勢拡大に向けたイメージ刷新を意図したのであろう。鍵となるのは「開かれた党」に向けた活発な党内論議である。
日本共産党が4年ぶりに党大会を開き、田村智子氏を新委員長に選任した。現委員長の志位和夫氏は空席になっていた議長に就く。
共産党は「ジェンダー平等」を党綱領に掲げており、田村氏の起用はそれに沿うものでもある。2019年に問題となった首相主催「桜を見る会」で舌鋒(ぜっぽう)鋭く安倍政権を批判し、存在感を発揮した。田村委員長の誕生は新鮮な印象を国民に与えるだろう。
国政政党の女性党首は、過去にも社会党の土井たか子委員長、保守党の扇千景党首、現在では社民党の福島瑞穂党首らの例などがあり、特段珍しいことではない。
今回、田村氏の委員長就任が注目されるのは、共産党が置かれた政治環境ゆえであろう。
志位氏は2000年の就任以来、党の顔として活動してきた。その間、共産党は天皇制や自衛隊を事実上容認するなどソフト路線を打ち出してきた。他方、23年という志位氏の長期在任には疑問の声もあった。加えて、党員の投票で委員長を選ぶ「党首公選制」を求めた古参党員を除名処分とした対応に厳しい目が向けられている。
田村委員長の就任だけで「党が変わった」というイメージを国民に発信するには不十分だ。国民の目から見て分かりやすい、開かれた論議と党運営に努めなければならない。国民の生活実感や政治意識と大きく乖離(かいり)した議論にとどまっていては支持拡大にはつながらない。
共産党を含む野党各党に求められるのは自公政権に代わる新たな選択肢の提示であろう。当然、野党共闘も視野に入れる必要があろう。志位委員長体制で野党共闘は試みられたが、大きな実を結んだとは言いがたい。結果的に野党は自公の長期政権を許している。国民に選ばれていないという厳然とした事実を受け止めるべきである。
確かに外交・安全保障観などで共産党と他党の間に開きがある。それを乗り越えた野党間の連携と、自公との活発な政策論争を通じて国民の前に選択肢を提示することが日本の民主政治の前進につながる。田村新委員長の手腕が問われている。
沖縄では共産党は沖縄人民党の流れを組む政党として認知されている。
1947年7月に結成した人民党は沖縄の施政権返還を掲げ、米軍の圧政に対峙(たいじ)してきた歴史を持つ。傑出した大衆政治家であった瀬長亀次郎氏がその先頭に立ってきた。73年に共産党と合流し、その後も県内で革新共闘の一翼を担ってきた。
田村氏が率いる共産党は何をなし得るのか、沖縄からも注視したい。