<社説>自民主要派閥解散へ 根本的解決にはほど遠い


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<社説>自民主要派閥解散へ 根本的解決にはほど遠い
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 この国の政治を揺るがした事件は節目を迎えた。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件は、安倍派の会計責任者と二階派の元会計責任者が在宅起訴、岸田派の元会計責任者が略式起訴された。安倍派で多額の還流を受けた国会議員を含む5人も立件された。3派閥の政治資金収支報告書への不記載は総額17億円超だ。

 安倍派、二階派は派閥解散を決め、岸田文雄首相も岸田派を解散する意向だ。国民の政権不信の払拭と信頼回復が派閥解消の狙いだ。
 派閥解消は自民党の延命策であり、根本的解決にはほど遠い。これによって国民が納得すると岸田首相らが考えているならば、認識不足も甚だしい。文字通り、解党的出直しを迫られていることを自覚すべきだ。問題に関わった議員は辞職しなければならない。その上で、政治資金規正法の議論を急ぐべきだ。求められるのは政治資金の透明化と、法に反した議員の罰則の明確化だ。
 東京地検特捜部は安倍派幹部の議員らを任意で事情聴取したが立件できなかった。資金還流の中止が撤回された経緯に着目し、議員関与を見据え捜査したが客観証拠に乏しく共謀の立証を断念した。
 捜査でポイントになったのは、政治資金収支報告書への記載の有無だ。地検は「幹部が記載内容を把握していたとは認めがたい」と指摘した。パーティー券の販売ノルマ超過分を還流すること自体は法に触れないとの判断だ。
 こうして自民党派閥による国民だましの錬金術は報告書の記載の有無という「事務方の違法行為」で片付けられた。トカゲの尻尾切りである。
 政治資金規正法で収支報告書の提出義務を課すのは、実際に政治資金を集めたり使ったりする政治家ではなく、各団体の会計責任者だ。団体の代表である政治家の立件にはハードルが高く、過去の規制法違反事件の多くも事務方が立件されたに過ぎない。
 これを改めるには、議員が連帯責任を負う「連座制」導入が不可欠だ。罰則の対象を議員にまで広げるべきだ。
 問題の本質は派閥ではなく、政治資金の在り方にある。規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるためにある。透明性確保や、政党と特定の企業・団体との癒着防止が求められる。
 そのためには派閥解消以前の問題として、政治とカネを巡る国民の信頼回復のための法整備が急務だ。共同通信社が実施した全国電話世論調査では、政治資金規正法の厳格化や罰則化など法改正が「必要だ」が86・6%に上った。
 派閥をなくしても、政治資金の集め方を根本から改めなければ、再び次なる「派閥」が生まれる。政治資金パーティーの禁止や、第三者によるチェック機能導入など国民の信頼回復に向けた抜本的対策を求める。26日召集の国会ではその議論が待ったなしだ。