<社説>地域外交提言書 平和創造へ強みを生かせ


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<社説>地域外交提言書 平和創造へ強みを生かせ
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 沖縄の持つソフトパワーを生かし、国際的な平和創造の拠点となるよう、全力を挙げてほしい。

 「地域外交に関する万国津梁会議」の君島東彦委員長は18日、玉城デニー知事に対し、県が取り組む地域外交に関する提言書を手渡した。
 提言では、県が地域外交により目指す姿(ビジョン)として、「人的交流を戦略的に促進し、国際協力・貢献によって関係性を構築し、ソフトパワーを前面に押し出すことで経済振興につなげ、そして沖縄を国際交流の拠点とすることで平和創造の拠点となること」と記している。
 県は地域外交の基本方針を3月末までに決定する。この提言を生かした積極的な地域外交に取り組むべきだ。
 津梁会議の提言では、地域外交を「国家間外交では担うことのできない、独自の役割を地方自治体の主体性に基づいて行うもの」と定義づけるとともに、県の持つ強みとして、東アジアの中心に位置する地理的優位性、独自の歴史や文化に基づくソフトパワー、世界に広がる人的ネットワークなどを挙げた。
 東アジア地域では、台湾を巡る米中対立や北朝鮮による弾道ミサイル技術を使用した軍事偵察衛星打ち上げ、ミサイル発射実験など、緊張が続いている。日本政府も南西地域での自衛隊強化を進めている。「台湾有事」となった場合には、在日米軍基地が集中する沖縄も巻き込まれる恐れがある。
 沖縄が紛争に巻き込まれないためには、国家間外交による対話促進も不可欠だが、県自らが中国、台湾の自治体との人的・経済的交流を促進し、自治体レベルで平和と安定の重要性を共有することも必要だ。
 玉城知事は、昨年7月に中国、11月には台湾を訪問した。歴史的、文化的にもそれぞれと関わりが深い沖縄は、中台関係の緊張緩和に資することができるはずだ。
 今回の提言にうたわれる、多者間での地域外交の実践が求められる。人的、経済的交流を通して自治体間の信頼関係を強固にし、市民目線からの平和創造を醸成していかなければならない。
 また、提言では県の地域外交について、具体的な方策も提案している。
 県の地域外交の考え方に賛同、または米軍基地が駐留し沖縄と同様の課題を抱える海外地方自治体とのネットワーク構築や、東シナ海での軍事力行使の抑制を求める共同声明の作成・公表、海外自治体首長と平和構築に関する会合の沖縄開催などだ。国際機関が集積するスイス・ジュネーブの役割を沖縄が果たせる可能性があると指摘している。
 県は、2024年度の組織再編で地域外交室を「平和・地域外交推進課」に格上げし職員19人を配置、知事公室に地域外交を担当する統括監を置き体制を強化する。粘り強い取り組みを期待したい。