<社説>導水管老朽化で漏水 優先度を上げ対処急げ


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<社説>導水管老朽化で漏水 優先度を上げ対処急げ
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 沖縄の水は、深刻な危機にあると認識を新たにしなければならない。導水管や主要送水管(管路)の老朽化への対処の遅れである。うるま市の導水管で漏水が発生し、まだ修復できていない。耐震化も遅れていることが明らかになった。社会インフラ、ライフラインとして水道の重要性は、能登半島地震の被災地で示されている通りだ。政治・行政の重要課題として優先度を上げるべきだ。

 うるま市昆布の県道75号の地下を通る導水管の漏水は16日に発生した。約4センチの穴が開いており、老朽化による腐食とみられている。
 17、18日の工事に伴う断水による操業の一時停止で事業者に損害が出るなど、経済活動にも影響があった。19日に県企業局は記者会見を開いて謝罪した。23日の対策本部会議までに工法を検討する。
 企業局が運営する導水管、送水管は総延長が712・3キロある。そのうち36・8%が法定耐用年数の40年を超えている。今回漏水が分かった導水管も敷設から48年である。
 さらに、県と市町村などが事業運営する管路(総延長約2041キロ)のうち約7割が必要な耐震性を満たしていないことも明らかになった。2021年度末時点で震度6強程度の地震に耐えられる「耐震適合率」は30・4%にとどまり、全国平均の41・2%を大きく下回る。国は28年度までに全国の適合率60%を掲げている。沖縄県は企業局の管路でも43・8%と程遠く、地域別で最低の浦添市、糸満市はわずか14・6%だ。
 原因は予算不足だ。沖縄振興公共投資交付金(ハード交付金)の企業局への配分は、21年度は要望額169億8千万円に対し措置率49%、22年度は172億円に対し37%、23年度は132億円に対し32%と年々措置率が下がり、激減している。そのため事業完了が大きく遅れている。今回漏水があった区間の管路整備も完了予定が22年から30年へと8年も遅れている。
 沖縄の水の危機は三重苦の様相を見せている。有機フッ素化合物(PFAS)汚染の不安が続く中、少雨傾向でダム貯水率が低下し、節水呼びかけが始まった。貯水率低下は、PFAS汚染のため河川から取水できないことも影響している。そこに追い打ちをかけるように、今回の漏水事故である。
 水道料金値上げは県民生活や経済への影響が大きい。PFAS汚染は、米軍のやりたい放題を許している日本政府にも責任がある。県は、値上げを避けて、国への要求も含めて財源の確保に全力を挙げてほしい。
 10年には糸満市で最大震度5弱を観測する地震が起き、広範囲で水道管破裂などの被害が出た。地震でなくても、管路の老朽化で今回のような漏水がいつどこで起きてもおかしくない。対処は一刻を争う。これ以上、送水路整備を後回しにしてはならない。