<社説>自民党改革中間報告 国民にごまかし通じない


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<社説>自民党改革中間報告 国民にごまかし通じない
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 小手先の改革では国民は納得しない。さらなる政治不信を助長するだけではないか。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて発足した党政治刷新本部が党改革中間報告をまとめた。派閥は解消し「政策集団」に転換するという。「カネとポストの配分」という派閥機能から決別するという姿勢を示したが、派閥全廃は見送った。
 結局、派閥は温存される。これでは腰砕けではないか。刷新本部の本部長を務める岸田文雄首相が岸田派の解散を明言し、安倍派や二階派がそれに続いた。一方、麻生派は解散を見送り、茂木派、森山派は態度を保留している。
 派閥解散によってカネと政治の問題が解決するわけではない。それでも岸田首相は、自身が率いた派閥を解散することで裏金問題に対する責任を取り、政治不信払拭への決意を示したはずだ。それを覆すような内容だ。このようなごまかしは国民に通用しない。
 中間報告は政治資金規正法違反が判明した場合、党から派閥解散や活動休止を要求するとうたう。しかし、派閥が残る限り「カネとポストの配分」の機能が息を吹き返す可能性がある。党内から政治不信の病巣を取り除くべきだ。
 そもそも派閥は政策集団ではなかったのか。派閥間の政策論争は党を活性化させ、多様な論点を明確にする効果を持つ時代もあった。派閥の領袖(りょうしゅう)間で首相ポストが引き継がれれば、政権交代のような印象を国民に与えた。しかし、「安倍一強」と言われる時期を経て、政策集団として派閥の存在感は薄まった。
 現在、国民の目に映るのは、資金集めに奔走し、首相はじめ閣僚のポストを競い合う派閥の実像ではないか。いまさら政策集団への転換を声高に言ったところで説得力に乏しい。自民党はそのことを自覚すべきである。
 今回の裏金事件の捜査が一段落し、これまで説明の場を設けてこなかった議員が記者会見に臨んだ。しかし、「秘書が判断」「秘書に任せきりにしていた」などの常とう句を繰り返している。
 このような責任逃れの釈明を国民は許さない。少なくとも、事件で会計責任者らが立件された安倍、二階、岸田の3派閥の幹部は説明責任を明確に果たすべきだ。さらに、裏金の還流を受けた議員もきちんと説明すべきだ。それができなければ議員にとどまる資格はない。
 早急に求められるのは政治資金の透明化であり、責任の明確化である。問題が起きた場合、秘書らの「トカゲのしっぽ切り」に終わらせず、議員が連帯責任を負う「連座制」導入に向けた政治資金規正法改正は不可欠である。
 事件について岸田首相は「国民の信頼を回復するため、日本の民主主義を守るため、党自らが変わらなければならない」と語ってきた。その言葉に内実は伴っているのか厳しく問われている。