<社説>PFAS対策負担要望 財政支援は国の責務だ


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<社説>PFAS対策負担要望 財政支援は国の責務だ
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 米軍基地周辺で検出されている高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)汚染で、玉城デニー知事が木原稔防衛相、伊藤信太郎環境相と面談し、県や市町村が実施している対策費について国が負担することを求めた。

 玉城知事は補助対象外となっている浄水場などの維持管理費用についても「補助対象としてほしい」と訴えたが、木原氏は「関係省庁と連携しながら必要な対応をしていきたい」と述べるにとどめた。
 政府の対応はこれでよいのか。PFAS汚染は全国の米軍基地所在地域に関わる問題だ。基地内に汚染源が想定される以上、対策に悩む地域を財政的に支えるのは政府の責務である。もちろん米軍との協議で基地内調査を実施し、汚染源の特定を急ぐべきだ。
 米軍基地周辺の河川などから検出されるPFAS対策のため北谷浄水場に設置されている浄化装置の粒状活性炭の交換に対し防衛省は補助金を拠出している。しかし、粒状活性炭の交換費用のうち年間で約1億2千万円を県が負担しており、県企業局の水道事業を圧迫している。県が施設維持費の負担を政府に求めるのは一定の合理性がある。
 自然環境でほとんど分解されないPFASが体内に蓄積すると、がん発症や出生時の体重に影響が生じる恐れが指摘されている。汚染源を特定し除去しない限り、住民の健康不安と高額な財政負担が続く。県は基地内への立ち入り調査を求めているが、米軍が調査に否定的姿勢を示している。調査実現に向け、政府は米軍を説得すべきだ。
 県外では米軍横田基地で2010~12年に、PFASを含む泡消火剤の漏出が3件あったことが確認されている。東京都の多摩地域の水道水からPFASが検出されたが、米側は基地外への流出があったとは認識していないとしている。
 県内でも20年に普天間飛行場から泡消火剤が流出した。水に溶けた約14万リットルの泡消火剤が川に滞留した後、市街地に飛散したが、米軍は回収しなかった。
 事件・事故だけでなく、米軍基地が排出する汚染物質によって地域住民が健康を脅かされ続けている現状を放置してはならない。政府は国民を守るために基地との因果関係を早急に調べる必要がある。
 米国防総省が設置した作業部会は20年に(1)PFASを含む泡消火剤の使用停止(2)人体に与える影響の把握(3)浄化責任を果たすこと―の3点を明記した報告書をとりまとめた。米国外の米軍基地についても「今後、対処する方法を模索する」と明記した。
 日米両政府はPFAS汚染を拡大させないという方針は一致しているはずだ。立ち入り調査の実施に向けた協議を進めるべきだ。発生源と疑われる場所を調べられないまま、基地負担を強いられている沖縄側が高額な対策費を負い続けるのは理不尽だ。