<社説>林官房長官来県 辺野古中断し県と対話を


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<社説>林官房長官来県 辺野古中断し県と対話を
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 林芳正官房長官は28日、就任後初めて沖縄県を訪れ、県庁で玉城デニー知事と会談した。県と国で対立が続く名護市辺野古への新基地建設について、玉城知事が計画断念を求めたのに対し、林官房長官は会談後の会見で「辺野古移設に向けた工事を進めていく」と述べ、従来の見解を繰り返した。

 辺野古新基地を巡っては、大浦湾側の軟弱地盤改良工事に必要な設計変更を国が代執行で承認し、10日に工事に着手している。閣僚が来県し知事と会談したのは代執行後初だが、主張は平行線だった。
 今回の会談で林官房長官は、普天間飛行場負担軽減推進会議の作業部会を開催する方向で調整すると伝えた。
 普天間飛行場の危険性除去は、新基地建設に関わらず、国や県、関係自治体で進めるべき課題だ。早期の運用停止に向け、米側とも協議するよう政府に求めたい。
 新基地建設では、玉城知事は国に対し、対話による問題解決を求めてきた。24日に防衛省で行われた木原稔防衛相との会談では、対話の場を設けることで一致した。今回の林官房長官との会談が玉城知事が求める対話への一歩となるかは注視する必要がある。
 政府はこれまで「地元への丁寧な説明」との発言を繰り返すものの、代執行前に対話の場はなく、県の反対を押し切って大浦湾側の埋め立てを強行した。
 加えて、工事を巡る事前協議でも、県と国との間で溝が深まっている。
 県は23日、海上ヤード工事も事前協議の対象になると沖縄防衛局に通知した。これに対し木原防衛相、林官房長官とも「対象外」との認識を示している。
 事前協議は、2013年に当時の仲井真弘多知事が埋め立て申請を承認した際に付けた留意事項に基づくものだ。
 昨年9月21日、防衛局は大浦湾側の護岸工事に関する実施設計と環境保全対策の協議文書を提出。県は設計変更を承認していないことなどを理由に、10月19日に「応じることはできない」と回答した。
 県が協議に応じる文書を送付したのは代執行後だ。しかし国側は、9月の文書提出により「協議は始まっている」との認識だ。事前協議を都合よく解釈する一方、県が環境面で協議対象だと通知した海上ヤード工事を「対象外」とするのは、誠実な対応と呼べず、身勝手と言わざるを得ない。
 国は15年にも、護岸全22カ所のうち、先にボーリング調査を終えた12カ所の協議書を提出した。県が護岸全体をまとめて示すよう求めたが、国側はこれに応じず、工事を強行した経緯もある。
 代執行訴訟は、高裁判決を不服として県が上告している。国が県との対話を重視するならば、県が求める事前協議に応じ、工事を中止すべきだ。一方的な文書提出をもって埋め立て工事を進めることはあってはならない。