<社説>市町村の災害対策 優先順位を上げるべきだ


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<社説>市町村の災害対策 優先順位を上げるべきだ
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 本紙の県内市町村アンケートで、津波災害警戒区域にある「要配慮者」施設の「避難確保計画」作成の遅れと、災害時にすぐ使用できる簡易トイレや携帯トイレの備蓄の不足が明らかになった。いずれも命を守るために絶対に必要だ。行政全体の中で災害対策の優先順位を上げるとともに、その中の優先順位の見直しを急ぐべきだ。

 高齢者や障がい者、乳幼児ら津波災害時の要配慮者施設は31市町村に少なくとも628カ所ある。そのうち避難確保計画を作成しているのは全体の13.2%、11市町村の計83カ所にとどまっている。
 避難確保計画は、津波や水害、土砂災害が発生する恐れがあるとき、円滑・迅速に要配慮者が避難できるように施設管理者が策定する。そして、市町村に報告・公表し、訓練を行うことが、法律で義務づけられている。遅れの原因について専門家は、多くの施設が人手不足で手が回らないことと、支援に当たるべき行政の機能不全があると指摘している。
 沖縄近海で大規模地震が起きれば、今回の能登半島地震と同様、ごくわずかな時間で津波が到達するので一刻の猶予も許されない。現状は深刻だと言わざるを得ない。
 災害トイレについては、県内41市町村の8割に当たる33市町村で、想定避難者数に対する備蓄数が不足していた。内閣府のガイドラインでは、必要な備蓄数は避難者1人当たり1日5回使用として3日分である。アンケートでは「食料備蓄を優先している」という回答もあったが、トイレも食料同様に被災直後から必要である。
 不足を補う方法として、マンホールに便器を取り付けて下水道に直接流す「マンホールトイレ」の整備が全国で広がっている。県内でも、那覇市の30基など12市町村が導入しているが、さらに拡大してほしい。
 内閣府の調査で、女性や妊産婦、乳幼児向け用品の備蓄が全国的に進んでいないことも明らかになった。離乳食を備蓄している市区町村は14.3%、妊産婦用衣類は0.5%にとどまっている。また、防災・危機管理部門に女性職員が1人もいない「女性ゼロ」自治体は全市区町村の61.1%で、沖縄県は73.2%だった。備蓄品の選定や避難所の運営に女性の視点は不可欠だ。この点でも見直しが迫られている。
 能登半島地震では、交通が遮断されやすい半島地域の厳しさ、過疎地域への救援の難しさなどがクローズアップされた。離島県で小さな離島が多い沖縄はより深刻だ。
 備蓄に加えて、海路、空路での緊急対応が必要になる。国や県外からの支援にも頼ることになろう。観光客や外国人への配慮も求められる。能登半島地震を教訓に、沖縄県の特殊事情を踏まえて課題を洗い出し、優先順位を見極めて災害対策を徹底すべきだ。