<社説>オスプレイ飛行検討 危険な欠陥機は退役せよ


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<社説>オスプレイ飛行検討 危険な欠陥機は退役せよ
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 鹿児島県・屋久島沖で昨年11月に発生した米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ墜落事故を巡り、米国防総省が事故を引き起こした「機器故障」を特定したと、AP通信が報じた。報道によると、国防総省は既に飛行再開に向けて計画を進めている。

 事故を受けて、米軍は全世界でオスプレイの運用を中止した。それから2カ月経過したが、事故原因に関する公式発表はない。報道された「機器故障」は、事故機だけのものなのか、同型機全てに共通する構造上の問題なのかは判然としていない。このまま飛行再開を受け入れるわけにはいかない。
 オスプレイの技術評価を担当した元主任分析官レックス・リボロ氏は、今回の事故で墜落前にオスプレイの機体が回転していたのが目撃されていることに触れ「相互接続クラッチに問題があることを意味する」と指摘している。
 同氏によると、機体のクラッチが滑ったり、破損したり、ドライブシャフトが切断されたりした場合、飛行制御コンピューターが機体を制御できずに回転してしまう可能性があるという。
 仮にリボロ氏の分析が正しければ、クラッチの破損などでオスプレイはどの機体であっても同じように制御不能に陥る恐れがある。
 事故を受け、米軍は整備記録の見直しなども実施しているはずだが、機器故障は整備で見つかるものなのか、運用年数によって故障の頻度が高くなるのかなど、徹底した調査を実施し、公開すべきだ。
 だが、詳細な事故原因を公表しないまま飛行を再開する可能性は高い。過去の墜落や部品落下などの事故では、米軍は一方的に「飛行再開」を通知し、わが物顔で沖縄の空を飛んできたからだ。
 防衛省は本紙の取材に「米側とは事故の状況や安全対策について確認作業をしているところだが、内容については答えを控える」と答えている。水面下で米軍と調整し、事故原因を伏せたまま運用を再開させてはならない。優先すべきは国民の安全だ。
 航空機の事故は一歩間違えば人命に関わる。原因を究明し、再発防止策を徹底するまで同型機の飛行を中止させるのは当然の対応である。2012年10月に米軍普天間飛行場に配備されたオスプレイは、16年と17年に墜落事故も起こした。全機に共通する構造的欠陥があるなら直ちに退役すべきだ。
 県や宜野湾市、県議会などは事態を重視し、飛行停止を求めている。県民の生命や財産を守るための切実な要求を無視してはならない。オスプレイの運用に多くの県民は同意していないのだ。
 米議会でも乗組員の安全性の観点から疑念の声が上がっている。開発段階から安全性に関し深刻な懸念が指摘されてきた危険な欠陥機の飛行を許してはならない。実際に被害が発生してからでは遅い。