<社説>2024年度県予算案 こども支援で未来を築け


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<社説>2024年度県予算案 こども支援で未来を築け
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 県の2024年度当初予算案が決まった。過去最高だった前年度比2・2%(193億円)減となる8421億4300万円となった。新型コロナウイルス感染症対策の費用減などで6年ぶりに前年を下回ったが、8千億円規模となるのは3年連続である。

 子ども支援の充実を目指す県の意図を反映した予算である。コロナ禍を脱し、回復基調に転じた県経済を支える施策も欠かせない。議会での活発な審議を求めたい。
 今回の予算編成に関し、県は自立経済の構築や安心・安全な県づくりなどと並んで「こどもまんなか社会」の実現に向けた沖縄の未来への投資と支援を掲げた。24年度予算案の特徴である。
 県は次年度、「こども未来部」を新設し、480億3千万円を計上している。新規となる「県こども計画」策定、里親支援センターの設置などの事業に取り組む。
 「子どもの貧困」の問題はコロナ禍を経て、依然として深刻な状態が続いている。子育て支援の充実も待たれている。「こどもまんなか社会」を標榜(ひょうぼう)する県は、沖縄の社会構造の見直しを視野に入れた施策展開を意図していよう。子ども支援の充実で未来を築かなければならない。
 子ども支援の施策と関連して、教育現場の負担改善も待ったなしだ。教員不足の解消も急務である。昨年4月、働き方改革推進課を新設した県教育委員会は引き続き教員の負担軽減に取り組む。教員業務支援員配置事業は、教員に代わって業務を担う支援員の配置を拡充する。これらの事業で働きやすい教育現場の推進に努めてほしい。
 多くの県内企業が頭を痛めているのが人手不足である。コロナ禍からの回復を急ぐ県経済の足かせとなっている。県内経済界からは人材育成や中小企業の成長を促す事業への予算投入を求める声がある。燃料や資材高騰に対応した施策展開も必要だ。
 気になるのが物価高騰である。24年度予算案の物価高騰対策費は23年度比49億9千万円減の29億2千万円にとどまっている。国からの国庫支出金が減ったことが原因だ。
 現在のガソリン高騰に加え、今後予定されている水道料金の値上げは県民生活に大きな影響を与えるだろう。県の電気料金高騰支援が5月に終了した後の電気料金の動きも懸案事項である。
 玉城デニー知事は「諸物価の高騰については、国がどのような財源を確保するかということは非常に大きい」と述べている。限られた予算の中でも物価高騰にあえぐ県民の家計を支えなければならない。県民の生活実感に見合った事業を求めたい。
 県内のさまざまな課題に対応する施策の着実な実施と予算の円滑な執行は豊かな県民生活と県経済の基盤となる。審議する県議会定例会では沖縄の現状と将来を見据えた議論に徹してほしい。