特殊詐欺の根絶に向け、官民挙げて取り組みを強化していく必要がある。
2023年に沖縄県警が認知した特殊詐欺被害の件数は48件、被害総額は2億円超に上り、いずれも過去5年で最悪となった。被害額は5年で10倍に跳ね上がっている。
警察庁のまとめ(暫定値)によると、23年の認知件数は前年比8.3%増の1万9033件と直近10年で最多となった。
特殊詐欺の手口はさまざまだ。身に覚えのないインターネット料金などを請求される「架空料金請求詐欺」や、医療費など還付金があると言ってATM(現金自動預払機)を操作させ犯人の口座に送金させる「還付金詐欺」、親族らをかたり現金をだまし取る「おれおれ詐欺」など10類型に分けられる。全国では23年、特定の電子マネーの詐取やコンピューターウイルス除去名目のサポート詐欺が目立ったという。
23年2月には、県内の宿泊施設を拠点とする特殊詐欺グループが容疑で逮捕された。被害は全国各地に及ぶとみられる。また、海外を拠点にしたグループの摘発も相次いでいる。
捜査関係者によると「手口やグループを解明しても、また新しい詐欺が横行する」といい、「いたちごっこ」の状態が続いているという。
巧妙化する特殊詐欺に対し、24年4月に警視庁など7都府県警に計約500人体制で集中捜査する組織「連合捜査」を新設、全国の警察本部に連合捜査の担当部署を置く。47都道府県一体となって特殊詐欺グループの壊滅を目指すという。都道府県の枠を超えた捜査、摘発に全力を挙げてほしい。
企業側でも特殊詐欺被害防止に向けた取り組みが進んでいる。NTT東日本、NTT西日本は高齢者のいる世帯を対象に、電話番号を表示する「ナンバーディスプレイ」と、番号非通知の着信を拒否する「ナンバーリクエスト」の両サービスを無料化した。コンビニエンスストアでは、店員の声かけが被害防止につながっている。各業界と警察の一層の連携強化が被害防止につながる。
家庭でも、知らない番号や非通知の電話に出ないこと、言われるままに金銭を振り込まず信頼できる人に相談するなど、それぞれができる対策を実行したり、話し合ったりしてほしい。日頃の備えが万が一の被害を防ぐ第一歩と言えよう。
教育現場での啓発も重要だ。警察庁のまとめでは23年に摘発された2499人のうち、20歳未満が17.8%だった。被害者から現金などを受け取る「受け子」の5人に1人が20歳未満という。
SNSなどで「闇バイト」に応募するケースもある。若者が安易な気持ちで犯罪に加担することがないよう、警察と教育機関による活動も積極的に進めてほしい。