<社説>ウクライナ侵攻2年 国際社会協調で停戦導け


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<社説>ウクライナ侵攻2年 国際社会協調で停戦導け
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  一般市民の犠牲が拡大し続けている。国際社会の協調で一刻も早く停戦に導くべきだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2年となった。戦闘は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。その間も市民は苦しみ、命を落とした。国連人道問題調整室によると2022年2月以降のウクライナの民間人死者数は今年1月までに1万200人を超えた。両軍の戦死者は19万人を超えるとも指摘されている。
 戦闘が長期化する中で、両国内では混乱が生じている。
 ロシアでは今月16日に反政府活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏が収容先の刑務所で死亡したことが波紋を広げている。昨年12月、モスクワ市内から厳しい環境にある北極圏の収容所に移されていた。国内ではナワリヌイ氏を追悼する動きが広がっている。西側諸国はプーチン大統領の責任を追及している。
 ウクライナ侵攻後、ロシア国内では強権体制が激しさを増した。今年3月の大統領選でウクライナ侵攻に反対するナデジディン元下院議員が立候補を目指したが、ロシア中央選管は候補者登録を拒否した。プーチン氏の再選が確実視されているが、戦闘の長期化も合わせ、プーチン政権の強権に息苦しさを感じているロシア国民もいよう。
 ウクライナではゼレンスキー大統領が2月、国民に人気のあったザルジニー軍総司令官を解任し、後任にシルスキー陸軍司令官を任命した。軍の士気や国内の結束に影響を与える可能性もある。
 戦闘が続けば両国の死傷者はさらに増えるだろう。国際社会はこの惨状をいつまでも放置してはならない。
 米国をはじめ欧米諸国がこの2年間にやってきたことはウクライナ支援とロシアへの経済制裁の強化である。日本政府もロシアへの経済制裁で各国と足並みをそろえてきた。しかし、ウクライナ支援やロシア制裁が停戦を導くことはなかったのである。
 この間、はっきりしたのは国連の機能不全だ。大国の論理が横行し、具体的な解決策を示せないまま、戦禍の拡大を許してしまった。
 国連の事実上の最高意思決定機関である安全保障理事会は、ロシアの拒否権によってウクライナ侵攻に対する非難決議すら採択していない。国際紛争を仲裁すべき安保理は本来の役割を果たすことができないのである。国連のグテレス事務総長は「時代遅れの組織だ」と限界を吐露した。国連改革を急ぐべきだ。
 日本の役割を改めて考える必要がある。米国に追随するだけでは停戦に向けた役割を果たすことができない。ナワリヌイ氏死去に対して日本は欧米諸国とは異なり、慎重な姿勢を保っている。さらに一歩踏み込み、停戦に向けてロシアとの対話を粘り強く重ねるべきだ。
 戦後日本は平和外交を重んじてきたはずだ。今こそ、その真価が問われている。